Beautiful Moon 2nd (ページ35)

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☆ ページ35

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そして私は家に帰らず、必要最低限の着替えを買って川口さんの運転する車でホテルに直行した。

台本を覚えるのに集中したい時、読みたい本があって時間を気にせず読書をする時によく利用している。幸いにも覚えなければならない台本を持ってきていたから1晩暇を持て余すことなく過ごせそうだ。

照と私は半同棲の生活を送っている。同じマンションに部屋を借り、互いの家を行き来する。合鍵も持っているし、あのメッセージを目にした照は絶対に家に来る。とにかく1人になりたい。そうなればホテルしかなかった。

『あっ』

案の定電話がかかってくる。着信音は照だと分かるように設定した特別なものだ。

何度も何度も、切れては鳴ってを繰り返している。本当は出るべきだけど声を聞ける心持ちではない。……今声を聞いたら泣きそうだから。

でもいつまでも終わることはない。5回目の着信音でやけくそになってとうとう電話を取る。

「もしもし！？」

『……』

「A、どうしたの？今どこ？」

話すと泣いてしまいそうだからグッと唇を噛む。諭すような声だ。

『……言いたくない』

こんなの駄々をこねる小さな子供でしかなくて、情けない声しか出せない私は聞くからに弱っていて。

「言うと思った。川口さんに聞いてるよ、Aの居場所」

照は俺の連絡網舐めないで、と少し楽しそうに呟いた。

「今下にいる。ロビーに降りてきてくれる？」

『やだ……』

「嫌かもしれないけど今のAを1人にさせたくない」

ああ、完全にバレてるんだな。ただでさえ2人に隠し事ができないのに、川口さんと手を組まれたら雲隠れは一切できない。諦めるしかない。

「落ち込む彼女を1人にさせるヤワな男じゃないよ、俺は」

鼻の奥がツーンと痛い。込み上げるものを必死で引っ込め、カードキーを持って外に出る。ご飯を食べる気にはならないのに空きっ腹だからグーッと間抜けなお腹の音が鳴った。

エレベーターを使って1階のロビーに降りる。照の言う通り見知った顔があった。

「A」

『……なんで来たの』

「様子がおかしいからに決まってるじゃん。突然帰ってこないとか言い出すし電話にも出ないし」

『そういう時もあるかもしれないじゃん……』

「ない。Aは帰れない理由があったら絶対に教えてくれるし、電話に出れなくても折り返し連絡してくれる」