Beautiful Moon 2nd (ページ34)

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☆ ページ34

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撮影が終わった。ああ、これから家に帰らなきゃいけないのかと思うと憂鬱な気分になった。一瞬忘れられただけであの衝撃から全く立ち直っていないことに気づかされる。

“今日もお疲れ様☺️”

“撮影何時に終わる？”

“もし早めに終わりそうならサウナ行きませんか？”

スマホを確認すれば照からのLINEが届いている。いつものくせで既読をつけたけれど、今日は照の顔をまともに見れない。見たら泣いてしまいそうだ。

返事をせず、いわゆる“既読スルー”をして通知も切る。照と付き合ってからそんなことをしていなかったから罪悪感はあるけれど、どうしても気分ではなかった。

『帰りたくないな……』

まともに顔を見れそうにないから自分の家に帰りたい。でも合鍵を渡しているから照は絶対にうちに来る。実家に帰るのも考えたけれどあまりにも遠い。同じ東京なのに山の中だ。そうなるとホテルしかなかった。台本を覚えたり創作のために集中したりする時に利用するホテルを予約する。幸いにも空きがあって1泊はできる。

『川口さん』

「ん？」

『突然で申し訳ないんですけど、明日はホテルから現場に向かいます』

我ながら行動力があると思う。

「ホテル？またなんでホテル？」

『ちょっと色々ありまして』

「岩本くんと喧嘩したの？」

川口さんは目を丸くした。

『いや、してないです。ただこれから一緒にいる時間長くなるし、噂流されたら面倒だよなあって』

「……本当は？」

見透かされていた。私は川口さんと照には嘘がつけない。

『実はこんなの見ちゃって……』

私は休憩中に見た誹謗中傷の投稿を川口さんに見せる。川口さんは酷い言葉のオンパレードに眉間に深い皺を寄せた。

『これ見たら結構ショックで』

「なるほどね……」

当然本人に言えるわけはない。私は強い私でいたい。ダメージを受けて弱った自分を照に見せて心配させたくない。悲しませたくない。落ち込ませたくない。

「でも明日の打ち合わせは？」

『……行くけど、その後は分からないです』

「そっか。分かった、今日の場所だけ教えて？」

『はい』

とにかく私さえ耐えられたらいい。照には申し訳ないことをしてしまうけれど……
仕事中なのか、返信のないLINEにメッセージを打ち込む。

“今日は帰れません。ごめんなさい”

今も燻るモヤモヤに蓋をして私は送信した。