Beautiful Moon 2nd (ページ31)

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☆ ページ31

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ふと思い出す。あれ、重岡と私は何を話したかったんだ？

「とろろの話は今はいいの！」

照にぶった切られてまった。買ってもらったカフェラテは照の手に渡り、そのまま飲まれる。重岡のそれ藤井のやつ……、と言いたそうな呆気に取られた顔が面白い。

『でも照が嫉妬深いのは知ってるけどさぁ、ちょっと話してただけで浮気疑われるのは心外だよね』

こうなったら開き直るしかない。

『人それぞれ不倫浮気の線引きってあるけど後ろめたいことは何1つないよ？本当に後ろめたかったらこんなに堂々と話さないし』

休憩スペースは個室になっている訳じゃない。重岡と私が2人で話していた時にも何人かのスタッフさんや社員さんが飲み物を買いに訪れていた。そんな場所で浮気をするはずがない。

『ね、重岡』

「おう！親友の彼女奪うとか俺にはできひん」

『そういうことです』

そもそも浮気も不倫も興味がないのに……
照の手元に置かれた私のカフェラテを取り返し、1口飲む。ミルクのまろやかさとエスプレッソの芳醇な香りに荒みかけた心が癒される。

「おまっ、ナチュラルに間接チューすんなや！」

見てる方が恥ずかしいやんか、と重岡は頬を真っ赤に染めた。

「照はニヤケとるし……」

「いやあ？男前なのに可愛いことするなあって思ったら愛おしくて」

さっきから不機嫌だった照は超がつくほどのご機嫌になってくれた。目が蕩けている。

「まーた始まった。俺は藤井の惚気が聞きたかったんや！照のんはもう聞きまくってんねん！」

「なっ、俺のでいいじゃん！」

「聞くけど！聞くけど自分藤井の惚気聞きたないんか！？」

あ、これはヤバいかもしれない。2人がどっちの惚気を聞きたいかの喧嘩を始める。

「聞きたいよ！」

きっと冗談混じりの喧嘩なのだけど素直に巻き込まれたくない気持ちが勝る。よく思い出してみれば私は重岡に照の惚気話をさせられそうになっていたのだった。

2人が夢中になっている間にカフェラテを持ち、そっと席を立つ。

『お疲れ！あとは2人で仲良くどうぞ！』

「おい待てや！逃げんなや！」

重岡の声を無視し、早歩きで衣装部屋に向かう。もはや走っていたかもしれない。帰宅してから照からの質問責めは避けられないし、完全に諦めている。

後ろを振り返らないように私は衣装部屋を目指して廊下を駆け抜けた。