Beautiful Moon 2nd (ページ28)

今日:16 hit、昨日:59 hit、合計:51,976 hit

☆ ページ28

·

Aはフードを深く被り、顔を隠すように壁側へ向けた。それが妙に色っぽくて、滅多に見られない姿だからどうしても見たくなって、ほんの少しだけフードをずらした。

『あんまり見ないで……？』

「やだ。こういう時しか見れないもん」

俺の方が寝るのは早いのに、起きるのは遅い。だからいつもAの寝顔やリラックス顔を見られない。今にも寝落ちてしまいそうな無垢な表情を俺にも見せてほしい。

これから何年も過ごす中で、必ず俺に寝顔を見せられなくなる日がやってくる。今だけでいいから堪能させてほしい。

「可愛い……」

『恥ずかしい……』

素まつ毛はクルンとして長い。見れば見るほど可愛くて美人だ。でもとろんと蕩けた目元は子供みたい。きめ細やかな肌、柔らかなほっぺ。これ以上俺以外の誰にも見られたくない。触られたくない。

汗で潤った頬をすりすり親指で撫でる。

『ひかるもゆっくりしてよ……』

私ばっかり触ってないで、とAはゆっくり寝返りを打った。俺の楽しみは一旦ここまでだ。10分間、朗らかな陽だまりに包まれて体を休める。Aに極上の“ととのう”を提供できて俺は満足だ。

·

『はあああっ』

1セットだけでも充分だったのに、Aは3セット付き合ってくれた。さすが体力の鬼だ。女性かつ初めてで3セットもできるのは凄いとしか言いようがない。

男でも最初はキツくて、完全インドアなふっかは2セットでギブアップした。かく言う俺は5セットやってAを引かせてしまったけど。

『体軽ーい……』

「でしょ？この脱力感、お風呂とベランダで再現できそう？」

『できないね』

自らの発言を永遠に根に持たれているとは思わなかったのか、Aは苦笑いした。

『途中で記憶ないもん。外気浴の時とか』

「それがととのうってことだよ」

伸ばしきっていた羽をゆっくり休めてリラックスする。それを味わってほしかった。サウナの後、ご飯を食べて元気になったAはグッと背伸びをした。

「ハマりそう？」

『ハマりそう。照が教えてくれたから』

これが資格持ちのプライドだ。そして俺だからハマってくれた。ニコニコしているAに釣られて俺も笑顔になれる。

「また誘わせてね？」

『うん！その時は絶対に時間作る』

作戦成功。また1人サウナーが増えて俺達はようやく共通の趣味を見つけた。