Beautiful Moon 2nd (ページ26)

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体を拭いて俺の頭にはタオルを巻く。ヘアクリップでAの髪の毛をまとめ、頭にはサウナハットを被せる。妹の髪の毛をアレンジしていたことがあるから、Aの長めのボブのアレンジもお手の物だ。

「お水飲んで？」

『ん……』

「飲まないと口移しだからね？」

冗談のつもりがその一言で眠気が覚めたらしい。

『やだ、飲む！』

ハッと目を見開いたAは慌てて水を飲んだ。俺の口移しは嫌なのか。A的にはTPOを弁えたのだろうけどちょっぴり凹む。

個室だから気にしなくたっていいじゃん。そもそも“やだ”と拒絶されたら傷つく、と思ったのは俺の心に留める。

「じゃあ入ろっか？」

『はーい』

いざ中へ入る。

『うあぁ、熱い……』

モワッとした蒸気と熱気が全身を包む。これだ。

「Aは下の段に座った方がいいと思う」

もちろん無理はさせない。熱気は高いところに集まるから上段に行くほど高温になる。初心者が冒険するのは危険だし、Aの体が耐えられなくなって体調を壊したらサウナに対するイメージが悪くなる。それだけは避けたい。

Aには下の段の入口近くに座ってもらった。

「温度差あるから座り方はあぐらがいいよ。体育座りでもいいかな」

『プロだ……、プロがいる』

「俺資格取ったから」

『サウナの？』

「うん。だから家の風呂とベランダがサウナ代わりになるって言われて燃えたの」

『私あの時煽ったんだね。プロの前で』

Aの体からは汗が流れ始めた。スーッと一筋、背中を伝っている。

「10分入るけどキツくなったら言ってね？」

『分かった。今のとこ平気』

体育座りでじーっと耐えている。普段は胸を張って背筋を伸ばして堂々としている彼女が体を縮めると小動物みたいで可愛い。上の段から見るAもまた絶景だ。

「じゃあロウリュしよっか？」

『ロウリュ……？』

「この水をサウナストーンにかけたら一気に変わるから、1回やってみるね？」

アロマ水をゆっくり丁寧に石の上にかける。Aが選んだアールグレイが蒸気となり、匂いが充満する。

『すご、一気に熱くなった！』

「でしょ？」

発汗作用が促進され、互いの体から大量の汗が流れる。

「こっち来てみ？全然違うから」

『うわっ！熱い！』

俺の隣に座ったAは目を輝かせた。白いサウナハット姿がお茶目でキュートだ。