Beautiful Moon 2nd (ページ3)

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☆ ページ3

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Aが怪我をした。その事実だけで生きた心地がしないし軽い重いに関係なく心配なのに、手負いで殺陣をするなんて考えられない。

誰も止めなかったのか。Aに負担のかからないシーンの稽古に変更しましょう、とは誰も提案しなかったのか。

「聖也、お願いがある」

でも現場でそういう話が出なかったとは思えないから、Aの意思が関わっているのだろう。

「今日家まで送るから今からAの荷物持っててくれない？」

「分かった。A、バッグ貸して？」

『あ、うん』

聖也にAのトートバッグを持たせる。

「そんで今から俺の手になって？」

「照の手？」

「うん」

他に人がいないのを確認してAの隣に立つ。右腕でAの背中を、左腕で両脚の膝裏を支えてグッと持ち上げる。その体は思った数倍軽く持ち上がった。

『うわっ！』

「おお……！」

Aの小さな悲鳴と聖也の感嘆が同じタイミングで漏れた。

『何！？』

Aは次第に顔を赤くする。不謹慎だけど至近距離で見るAは本当に可愛い。

「危ないから俺の肩に抱き着いてて」

『いや、え、待って……』

横抱き、いわゆるお姫様抱っこだ。

俺のお姫様はとんでもないおてんば娘だ。痛みに強いが故に無理をしているつもりがなくても無理をするし、絶対に捻挫の自覚があったのにいつも通り動いてしまう。本当に本当に困った人だ。でも憎めない。惚れたもん負けってやつだ。

「ほら、早く」

『はい……』

Aは遠慮がちに俺の肩に手をかけ、抱き着いた。少し近づいたらキスできそうな距離に顔がある。俺もあまり直視できない。

「照、いつの間に主導権を奪うようになったの……」

「ん？付き合って分かるようになったんだよ、どうすれば
リードできるかって」

女の子扱いをするとAから主導権を奪える。付き合うまではAにリードされてきた。座長と子役だった時代から抜け出せないのが原因だったけれど、大きな背中で皆を引っ張るAも普通の女の子。

同じように俺も普通の男だ。Aより身長が低いちびっ子の俺じゃない。大人だしA1人くらい簡単に抱き上げられるくらい鍛えている。

「なんか俺お付きの者みたいになってる……」

「あはっ！」

車まで戻ってきてAを降ろす。足が痛まないようにそーっとゆっくりと地に足をつけた。