Beautiful Moon 2nd (ページ1)

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これは練習ページ1

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ヤバい、痛い。不慮の怪我だった。今回の舞台はパルクールやアクション、殺陣を多用する。

稽古中に男性キャストとぶつかってしまい、倒れる際に左足首を捻った。感覚と経験から骨折には至らないものの捻挫はしている。

「A、大丈夫……？」

『大丈夫です。アイシングすればちょっとは収まります！』

アイシングをして痛みは引いたものの、稽古を再開してしばらく経つとぶり返す。耐えられなくはないけど強く踏み込むと血の気が引く。冬なのに全身から脂汗が吹き出す。

「お前よく耐えたね」

稽古が終わって再びアイシングをしていると、舞台上で相棒とも呼べる彼が私の肩をポンと叩く。

『正直記憶飛んでる。私動けてた？』

「心配になるくらい飛んで踏み込んで戦ってた」

『それは良かった……』

「良くねえよ。絶対悪化してるから」

ちょっとは自重しろ、と彼は私にデコピンをした。

「お前が怪我して無理して怒られるのなぜか俺なの！」

『あはは……』

「いや、大切にされてるとは思うけどさ」

お互いに苦笑いしたのはきっと共通の1人が頭に浮かんだからだ。チョコレートとタピオカが大好きな高身長強面細マッチョが。

「だってあの岩本よ？キャプテン岩本と裏ボス藤井が本当に付き合ってるなんて信じられない」

『その裏ボス藤井マジでやめて？』

「キャプテンなのにAの言いなりだったじゃん」

『私の言うことは絶対とか1回も言ってないのよ、こっちは』

「マジ？」

『驚くとこじゃないし喧嘩売ってるよね？』

今回共演する彼は実は高校の同級生だ。当然照とも同級生だし、1年ほど前に雑誌上で共演も果たしている。照には深澤辰哉という高校の先輩でありかけがえのない家族のような存在がいるけれど、彼もまた照にとっての大切な存在だ。

「事実しか言ってないけど」

『照と私が付き合ってるの下り以外全部デマね？』

ああだこうだと言い合いながらも、アイシング中の暇な時間を会話で埋めてくれる。私達の立場をよく理解してくれるから口外する心配もない。彼は照が事務所に入って一緒に頑張った5人以外で交際の事実をよく知る数少ない人物だ。

冗談は置いといて、とヘラヘラ笑った彼はゆっくり帰り支度をしながら私の話し相手をしてくれる。スタッフさんに貰ったのか、湿布と湿布を固定する粘着シートが机の上に準備されていた。