【QK】ミモザの花言葉 vol.3【短編集】

目眩 ko × ini ページ50

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乾side

目眩がした時は、1mmも身体を動かさない方が良い。そんな実体験に基づく知識がついたのはいつ頃のことだっただろうか。中学か高校の頃だったかな、高校では実践してた気がするから。

なんでこんな話をしているかって、現在進行形で目眩が起きているから。編集をしていた手をピタッと止めて、遠くを見つめる。

いやーでもそろそろ怪しまれそうだなー。早く治ってくれ…。

「乾？大丈夫？」

「っあ、こうちゃん…。」

たまたま俺がいたデスクの横を通りかかったらしいこうちゃんに声をかけられた。呼びかけられれば当然その方向を向くわけで、頭が動いてより視界がぐるぐる回る。

「なんかぼーっとしてるけどなんかあった？」

「…ぎゅってしても良いっすか？」

あーあー何を口走ってるんだ俺先輩に向かって。弱った体は思ったもり自制が効かないらしく、考えるより先に口に出してしまった。

「お？おう良いけど。」

そう言いながら少し俺に近づいてくれたこうちゃんに手を回す。ちょうど良い感じに腰のあたりだから抱きつきやすい。お腹ぷにぷにじゃなくなっちゃったなぁ…。結構好きだったのに。

「ちょっと、マジでどうしたの？」

「んー、なんか、貧血？目眩する。」

「あらあら、そりゃ大変だ。仮眠室行く？」

「や…、もう少しだけ、このままで。」

それに対する返事はなくて、ただ温かい手が背中に添えられる。大丈夫だよ、と言ってくれているようで、なんだか安心した。

それに甘え続けること数分。数分？分からんけど。

「っ、ふぅー、もう大丈夫っす。」

「おぉ、良かった。でも仮眠室は行きな、ついて行くから。」

「はぁい。」

放置していたパソコンを保存して閉じて、言われた通り仮眠室に向かった。寝不足なのかな、あんまり自覚はないけど。布団に入れば自然と眠気が襲ってきて、すぐに眠りにつけた。

最後に聞いた言葉は、こうちゃんの「おやすみ、乾。ゆっくり休んで。」だった。


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