1. ページ7
.
「手越が泣いたくらいじゃ、俺は…多分シゲと小山も、どこにも行ったりしない」
──どんな批判も俺が受け入れるから、メンバーのことは何も言わないで。
昔、雑誌のインタビューで手越が言っていた言葉をなんとなく思い出す。
4人になってからの手越は、怖気付く俺達の手を強く引いてくれた。
デビュー当時は小さく震えていたような手が、3人分も引っ張るだなんて。きっと、本当はしんどかったに違いない。
「だからさ、手越。
お前が今不安なこと、ちゃんと言って?」
なんで体調崩したの?って聞き方じゃ、お前は逃げるだろうけど。
その優しさを逆手にとって、俺からのお願いっていう形で言えば…
「…ひとり、は、っ」
ほら、
「っ…ひとりはっ、やだっ…」
…仮面を被った不器用なエースが、顔を出した。
「…手越、沢山頑張ってくれたもんね。俺たち、任せてばかりでごめんね」
最近何があった、とかは分からない。
ただ単純に仕事が忙しすぎて体調を崩して、あげく今日の大仕事が上手く出来なかったから泣いてる、ってことかもしれない。
それかもしくは、またWhiteの時みたいに、大切な誰かが遠くにいってしまったのを黙っているのかもしれない。
…でも、それを探るのは俺の役割じゃない。
「まっす、やだ、おれっ…おれ、こんなっ、弱くないっ…」
「うん。手越は強いよ。でも今日は疲れちゃったんだよ」
ちがう、ちがう、と首を振る手越の姿が痛々しい。
たった一人ですべてを背負い続けてきてくれた、優しくて不器用なエースは、多分もう限界なんだ。
「…ほら、もう寝よう?明日もゆっくり休んでさ、後のことはその時考えようよ」
「ぅ、っひっく、まっす、いかないでっ…」
「うん、どこにも行かない。寝るまでいるから」
手越が明日起きて、この記憶が残ってて、思考が正常に働けば、きっと恥ずかしくて俺の顔なんか見てくれないだろう。
ていうか俺だって、手越がこんなに弱ってなければこんなに優しくしないし。
…でも、
「ちょっと休んで、また頑張ろ。今度はみんなで」
「っみん、な」
「うん。みんな。小山とシゲにも、手越は疲れちゃったんだよーって、俺から言っといてあげる」
「、…ぅん、」
赤く腫れてしまった瞼が、ゆっくりと下りていくエースのことを。
たまには、俺だって守ってやりたいんだよ。
「…おやすみ、手越」
また、あの太陽みたいな笑顔になれるように。
不器用でも、笑えるように──
.END
132人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かえで(プロフ) - みみくもさん» コメントありがとうございます!私も2人の涙腺スイッチが交互になってるの大好きです…笑 (2019年3月11日 13時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
みみくも(プロフ) - テゴマスが同時に泣かないの本当好きです…ありがとうございます…… (2019年3月11日 13時) (レス) id: 073e7ada57 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ルルさん» お久しぶりです!なかなか頻度は安定しないかと思いますが、よろしくお願いします^^ (2019年2月17日 16時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - お久しぶりです!短編集、どんな話が出てくるのか楽しみです!無理せず、更新してくださいね! (2019年2月11日 9時) (レス) id: 1a033fe3e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かえで | 作成日時:2019年1月26日 15時