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「…ねぇ、ホントに迷惑じゃない?」
「もう何回聞くの。いいから座ってて」
…なんとなく気が向いて、点滴をしてもなお熱の下がらない弱った手越を家に入れた。
時刻はもう既にテッペンを超えている。
俺は手越が病院で眠っている間に弁当を食べたからいいものの、手越は何も口に入れていない。
帰りがけに俺がコンビニに寄って買ってきたゼリー飲料も、車の中で渡したっきりずっと手越の手の中だから、きっともうぬるくなっているだろう。
「…それ、飲まないなら貸して。冷やしとく」
「あ…うん、ごめん…せっかく、」
「いや…俺が勝手に買っただけだし。気が向いたら食べな」
謝らせたくなくて、咄嗟に手越の言葉を遮る。
すると、手越は大人しく手に持っていたゼリーを俺に手渡して、小さくなってソファに座った。
こいつのパブリックイメージからすれば、ソファに大の字になるくらいしそうなものだけどね。
実際のところ、こういうマナー的な部分は昔から弁えてるんだ、こいつは。
「…あ。手越、シャワー浴びれる?」
念のために、と思いたって尋ねる。もしシャワーも浴びれないほどの体調なら、そのままベッドに直行させればいい。
「あー、うん、シャワーくらいは多分、」
…大丈夫。
そう言うよりも先に、ソファから立ち上がった手越の身体が傾いた。
「、馬鹿っ!」
机に手をついて、それでも支えきれずにカーペットにへたり込む手越に慌てて駆け寄る。
思わず飛び出した言葉は、もちろん「心配させるなよ」の意味だ。思っていたよりも、手越の体調は酷いものらしい。
「っ…ごめん、ちょっとミスった、」
「ミスった、ってお前なぁ…」
はぁ、とため息をつく。まさか、まだ虚勢を張るつもりだなんて。
「シャワーはやめておこう。ほら、肩貸すから寝室まで歩ける?」
「、……うん、」
小さな声だったけど肯定してくれたから、そのまま手越の腕を首に回して立ち上がらせる。
酒を飲んだってフラつかないようなこの男がここまで弱るのも、相当疲労やストレスを溜め込んでいたからだろう。きっとすぐ寝れるはずだ。
「何か必要なもんある?水とかは持ってきておくけど」
寝室に着くやいなや、力なくベッドに横たわった手越を見下ろして問う。ペタンコの金髪と潤んだ瞳が、こいつの犬っぽさをやけに強調しているような気がする。
「…大丈夫」
「うん、そっか。じゃあおやすみ」
そう言って、踵を返した時だった。
「、まっすーっ」
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かえで(プロフ) - みみくもさん» コメントありがとうございます!私も2人の涙腺スイッチが交互になってるの大好きです…笑 (2019年3月11日 13時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
みみくも(プロフ) - テゴマスが同時に泣かないの本当好きです…ありがとうございます…… (2019年3月11日 13時) (レス) id: 073e7ada57 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ルルさん» お久しぶりです!なかなか頻度は安定しないかと思いますが、よろしくお願いします^^ (2019年2月17日 16時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - お久しぶりです!短編集、どんな話が出てくるのか楽しみです!無理せず、更新してくださいね! (2019年2月11日 9時) (レス) id: 1a033fe3e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2019年1月26日 15時