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悔しかった。
なんで。
なんで、よりによって今日なんだよ、って。
体調には気をつけていた。
特に喉に関しては、お酒を控えたり保湿をいつも以上にしたりした。
…なのに。
「…あ、手越。気がついた?大丈夫?」
うっすらと目を開けると、そこは病院のベッドだった。
まっすーが俺の顔を覗き込んで酷く安心したような顔をするのを、ぼーっとしたまま目で追う。
酸素だか血だか、なんかよくわかんないけど頭に巡ってない気がする。多分、体調はすこぶる悪い。
「貧血と、疲労と…なんだっけ、なんか、喉の炎症?風邪みたいなもんだってさ」
あぁ、じゃあ足りないのは血の方か。
増田さんがゆっくり、寝起きの俺にもわかるように話してくれたことにはやけに納得がいった。点滴と、増田さんのマスクと、自分の体の倦怠感がまさに病人らしくて悲しくなるけど。
「…ごめん、ほんとに」
収録遅らせたあげく最後に倒れてごめん。
病院まで付き添わせてごめん。
迷惑かけてごめん。
上手く歌えなくて、ごめん。
全部のごめんを詰め込んで声を発すれば、喉がヒリヒリと痛んだ。俺らしくない声だ。
「…手越、今日謝ってばっかりだね」
あぁでも、もっともっと、「らしくない人」がいたみたい。
「……もっと、甘えてもいいんだよ」
まるで子供にするかのように、増田さんが優しく俺の頭を撫でる。
…甘えていい、だって?
珍しい、なんてもんじゃない。
慶ちゃんならまだしも、あの増田さんがだぞ。
「スケジュール、聞いたよ」
「…へ、?」
「最近、あんまり寝れてないんじゃない?」
…スケジュール……寝れて、ない……。
ようやく血が巡り始めたらしい頭の中で、増田さんの言葉を反復して理解を試みる。
この人の話の組み立て方が独特なのはいつものことだけど、いかんせん今の俺は寝起きだった。
「…頭、動いてないね?」
「、うん」
「つまりね、休みが無かったんだよ、ここ最近の手越は」
休みが無かった。
増田さんが分かりやすいように言い換えてくれて、ようやく理解に及んだ俺は、今度は記憶を遡る。
前回のオフはいつだっけ。
半日だけでも、無かったっけ。
「前のオフ、1ヶ月以上前」
「…まじ、?」
「まじ。だから、明日は急遽オフ」
らしくなく優しい今日の増田さんは、そう言って、右手の人差し指に何かを引っ掛けてくるりと回した。
「…たまには、ね?」
それは何度か楽屋で見たことがある、増田さんの車のキーだった。
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かえで(プロフ) - みみくもさん» コメントありがとうございます!私も2人の涙腺スイッチが交互になってるの大好きです…笑 (2019年3月11日 13時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
みみくも(プロフ) - テゴマスが同時に泣かないの本当好きです…ありがとうございます…… (2019年3月11日 13時) (レス) id: 073e7ada57 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ルルさん» お久しぶりです!なかなか頻度は安定しないかと思いますが、よろしくお願いします^^ (2019年2月17日 16時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - お久しぶりです!短編集、どんな話が出てくるのか楽しみです!無理せず、更新してくださいね! (2019年2月11日 9時) (レス) id: 1a033fe3e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2019年1月26日 15時