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「お二人さんおはよ〜」
変なタイミングでリハ室に入ってきたのは、慶ちゃんとシゲだ。
ゆるっとした挨拶をする慶ちゃんの後ろで、シゲがくぁ…とアイドルらしからぬ大きな欠伸をかましている。
いつもの…そう、いつもの風景。
「…悪い、ちょっと出るわ」
「あ、まっす…っ」
なのに、俺の相方だけ、「いつも」じゃない。
…俺のせい?
俺が、歌えなくなるかもって言ったから?
でも、なんでそれで増田さんが怒るの?
わからない、わからない。あの人は本当にわからない。
……わからないことは、怖い。
「…テゴちゃん、まっすーと何かあったの?」
「っ…わか、ない…」
こわい。きらわれたくない。すてられたくない。
そうだ、俺はずっと怖かったんだ。
「、っ捨てないで…」
俺の歌が、あの人より遥かに劣ってしまうこと。
あの人が俺を必要としなくなってしまうこと。
あの人が俺の事を、面倒だしウザイけど歌のために仕方なく隣に置いているだけだ、ってことを。
…自覚、してしまうこと。
そう、つまり、捨てられてしまうことが。
「こわいっ、やだ、やだぁっ…!」
「、手越っ?どうしたっ?」
増田さんが出ていった扉が、涙でぐちゃぐちゃに歪む。
もう増田さんはあの扉から戻ることは出来ないんじゃないか、扉の外で別の歌の相方を見つけてしまうんじゃないか。
そう思うと、余計に息が苦しくなって。
まるで縋り付くように、何かに救いを求めるように。
俺は、たまたま近くにいたシゲのTシャツをひっつかんだ。
「手越、何が怖い?俺と小山はここにいるよ、大丈夫だよ」
「っ、ちがぁうっ…!」
違う、違うんだ。
そりゃもちろん、シゲと慶ちゃんのことだって大切だけど。
「───あ、もしもし?今どこ?」
…でも、今は、
「ごめん、ちょっと急ぎめに帰ってきてくれる?…え?いや…なんでって…」
どこかに電話をしている慶ちゃんが、チラリと俺を見やるのがわかる。
シゲがずっと背中や頭を撫でてくれているのも、わかる。
でも今は、俺が求めているものとそれは違くて。
「っ、まっす、が、いいっ…!」
「……増田さん、聞こえた?
…あなたの大切な相方さんが、俺とシゲじゃダメなんだーって大泣きしてんの」
慶ちゃんがそう言って、カラリと笑った直後。
“───助けを求めんのがおせーんだよ、バカてごし”
電話越しに呆れる優しい声が、俺の鼓膜を震わせた。
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かえで(プロフ) - みみくもさん» コメントありがとうございます!私も2人の涙腺スイッチが交互になってるの大好きです…笑 (2019年3月11日 13時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
みみくも(プロフ) - テゴマスが同時に泣かないの本当好きです…ありがとうございます…… (2019年3月11日 13時) (レス) id: 073e7ada57 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - ルルさん» お久しぶりです!なかなか頻度は安定しないかと思いますが、よろしくお願いします^^ (2019年2月17日 16時) (レス) id: 4d5112f6b0 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - お久しぶりです!短編集、どんな話が出てくるのか楽しみです!無理せず、更新してくださいね! (2019年2月11日 9時) (レス) id: 1a033fe3e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2019年1月26日 15時