不機嫌な彼を攻略するには

本気、だから ページ31

としみつsaid




『ごめん、なさい…
泣いちゃって…
としみつさんの、うた、すごく素敵で…』


と「…ん、ありがとう。」




Aの頬に流れる涙を拭う。

ゆらゆら揺れる瞳に吸い込まれるように顔を近づけて、

気付いたら………Aのくちびるに触れてた。




『とし、みつさんっ…』


と「…ごめん。
我慢、できなかった…」


『っ……』




驚いた顔して固まっていたAは、だんだんと状況を理解したのか、顔を真っ赤に染めた。

そんな姿に愛しさが込み上げる。

俺、Aのこと、好きなんだ…




『あ、の……』


と「ごめん、いきなり。
頭で考えるより、先に身体が動いた…
でも、俺…本気、だから。」


『っ……』




Aは熱っぽい目で俺を見上げてくる。

なにを言えばいいのか、迷ってる様子。

そりゃそうだよな。

ついこの間まで、散々ひどいこと言ってきた男に、突然キスされて、本気だとか言われて。

あー、俺最低かも…

ちらりと時計を見ると、もう11時過ぎ。

とりあえず今日はAを帰そう。

頭の中こんがらがってそうだし…




と「今日は終わり！
撮影付き合ってくれてありがとう。
駅まで送ってくわ。」


『あ、えっと…お疲れ様です。
わざわざ、申し訳、ないです…』


と「夜遅いし、俺が送っていきたいの。」


『ありがとうございます。』




ちょっと強引かもしれなかったけど、駅まで歩いて送ることにした。
夜遅くて危ないし、なによりもう少しだけ一緒にいたいと思った。

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