不機嫌な彼を攻略するには

送ってくわ ページ11

Asaid




夜、一通り仕事を終えて、撮影部屋を出た。

この一週間の成果あってか、今日は前より上手く動けた気がする。

もちろんまだまだ改善すべきところはあるけど。

皆さんに挨拶をして、駅まで歩いてる途中でふと鞄の中を見ると、仕事のノートがないことに気づいた。




『やばい…大切な情報たくさん書いてあるのに…』




今日あれを使ったのは…

あ、朝としみつさんと打ち合わせした時だ！

だとしたら、撮影部屋にあるはず。

来た道をUターンして、急いで撮影部屋に戻った。




ガチャ…




部屋に入ると、電気がまだついてる。

誰か残ってるのかな…




『…あ、としみつさん。』


と「なに。」


『あ、えっと…忘れ物してしまって…
すいません、すぐ帰ります。』




朝、打ち合わせした辺りをさがしていると、





と「探してるの、これ？」


『あっ。
それ、です。』


と「机の下に落ちてた。」




私が探していたノートはとしみつさんの手に。

中、見られちゃったかな…

こんな社外秘の情報だらけのもの、忘れていくなんて、だらしないマネージャーだと思われてる…かも。




と「これ、一週間で勉強したん？」


『あ…そうです。
皆さんのこと誰よりも知っておかないとと思って…』


と「ふーん。」


『あの、皆さんの情報たくさん書いてるのに、忘れていってしまってすいません。
気をつけます。』


と「いや…それより頑張って調べたんだろ？
大切にしろよ。」


『は、い…』




としみつさんの雰囲気が、今までと少しだけ違う気がする。

興味すら持ってもらえなかったのに、私の言葉、ちゃんと聞いてくれてる。




と「このまま帰んの？」


『はい。』


と「家、どこ？」


『ここから電車で20分くらいです。』


と「ん、送ってくわ。」


『…へ？』




思わずマヌケな声が出た。

としみつさんに送ってもらうなんて…




『や、大丈夫です！
申し訳ないですし！
ほんとに、1人で帰ります！』


と「なに、そんな全力で。
嫌なの？」


『いや、ではないです…けど…』


と「遅いし送る。」


『でも…』


と「あーもう、うるせーな。
送るっつってんだから、でもとか、申し訳ないとか、いーの。」


『はい…じゃあ、お言葉に甘えて…』

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