⚫_青春の落とし物 ページ3
教祖夏×元カノ夢
目の前のレモネードが揺れる。この店のレモネードは本格的で苦い。
__”A、いいものあげるよ”
ぼんやり、不完全な記憶の欠片が私を襲う。あの時飲んだレモネードは甘酸っぱくて美味しかった。
『あの、Aさん』
目の前で私を呼ぶ声がして、顔を上げる。目の前の男性は顔を赤らめ緊張した面持ちをしていた。
『僕、Aさんと本格的にお付き合いをさせていただきたいんです』
私はぎゅっと膝の上で拳を握りしめる。
2つ年上で高学歴、職業は医者。話した感じも悪い人じゃないし、容姿もそこそこ。マッチングアプリで出会うには好条件すぎる。これを逃したら、もうこの人以上の条件の人には出会えないだろう。
私はゆっくりと頭を下げた。
「___ごめんなさい」
◆
「…また失敗したのか」
硝子が呆れてしまうのも仕方がない。もうこれで3度目だ。私は罰が悪くなってペットボトルに口をつけた。レモンのほろ苦さが口の中に広がる。
「好きだな、それ」
硝子は私のレモネードを指差す。先程高専内の自動販売機で購入したものだった。
「…美味しくないよ、あんまりね」
硝子が眉を潜める。ならなんで飲んでいるんだと聞きたいのだろう。私はきゅっとペットボトルの蓋を閉めて言った。
「でも、熱中症予防にもなるし、疲れた身体にも効くからおすすめだよ」
いつだか聞いた知識をそのまんま話し、「もうすぐ任務だから行くね」と立ち上がる。
「…だからって、毎日飲んでると太るぞ」
「…はは、そうかもね」
私はペットボトルを鞄に入れて、部屋を出た。
◆
「はぁ…」
それほど難しくない任務だった。私は身体を伸ばして息を目一杯吸い込んだ後、身体を一気に脱力させる。とはいえ疲れるものは疲れるのだ。
私は鞄の中からレモネードを取り出し、呷る。
___あれは、高専時代、私が共同任務でへまをした後のことだった。
「ごめんね…私のせいで迷惑かけて」
「別に気にしてないよ。失敗なんて人間いくらでもあるんだし」
高専に戻ってからというもの、座り込んでうだる私の頭を時折撫でながらずっと慰めてくれた。それが余計に申し訳無くて涙を溜めていると、彼はふと立ち上がった。
「A、少し待っていてくれるかい?」
安心させるように私に微笑んでから、どこかへ消えた彼を待つこと数分。私の頬に冷たいものが当たる。
「A、いいものあげるよ」
ひんやりと冷たいそれを受けとって、私は目を瞬いた。
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みみみみみ(プロフ) - 結菜さん» 閲覧ありがとうございます😭わーーそういって貰えて嬉しいです💘ありがとうございます!! (2023年2月21日 21時) (レス) id: 9c9c01e69d (このIDを非表示/違反報告)
結菜 - どうも結菜です!リクエストに答えてもらってありがとうございます。拝見遅れてしまいました🥺兵長もそうですけどめちゃくちゃ私好みのお話です😍私進撃もそうなんですけど、呪術回戦めっちゃ好きで呪術回戦0、10回ぐらい見るほど好きなので最高でした! (2023年2月19日 0時) (レス) @page5 id: 19761245cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2023年1月14日 19時