story8:スーパーマン ページ11
キヨ「…Aっ、」
「…っ！」
それからも、私はキヨから話しかけられても無視をするようになった。
私が想像するよりもずっと痛々しい表情を見せるキヨに、加害者のはずの私までもが胸を痛めた。
そして本来の目的であるいじめの終息も一向に見えず、終息どころかヒートアップしていくばかりだった。
「痛っ…」
『あ、ダメだよみゆ、顔に傷つくったらキヨにバレちゃうかもしれないじゃん？』
『あぁそっかぁ、ごめんね〜？キヨにバレたら適当に誤魔化しといて？』
ぎゃはぎゃはと汚い笑い声を上げながら去っていく3年生たちの先輩に対して、私は完全に戦意喪失していた。
もう何をしたって、無意味だ。
もう何をしたって＿＿＿。
勝手に込み上げてきた涙を流しながら、声を圧し殺して泣く。それが悔しさからくる涙なのか、悲しさからくる涙なのか、はたまた惨めさかキヨに対しての申し訳なさかは分からなかった。
授業開始のチャイムも気にせずに校舎裏でしばらく泣いていると、授業中だというのに走ってくる足音が聞こえてきた。
「…っ」
先生？それとも生徒？何にせよ、私がここにいることがバレたらまずい。でも身体が痛くて動けない。現実から目をそらすように目をつぶったとき、聞き慣れた声が私を呼んだ。
キヨ「A！どうした」
「…え？キヨ…？」
私はその声に驚いて咄嗟に返事をしてしまいハッとする。でもあの先輩たちへの恐怖よりも、キヨの顔を見た時の安心感でまた涙が込み上げてきて、私の頬をぼろぼろと伝った。
「なん、で」
キヨ「教室から泣いてるAが見えたからトイレ行くって言って抜け出してきた」
「は！？そんなことしたら、キヨの単位が」
大学推薦を目指しているキヨはこれまで学業も生活にも気を付けてきたのを知ってる。それが、私のために抜け出した授業のせいで台無しになるかもしれないのに。
キヨ「いいんだよべつに」
「何で…私、だってキヨのこと無視して…」
キヨは私の頭を撫でて、優しくいった。
キヨ「何か理由があったんだろ？それにな、俺はAのスーパーマンだから助けに来ることくらい当たり前なんだよ！」
おどけてふざけ半分でいうキヨと、昔の男子たちから私を守ってくれていたキヨの姿が重なった。
「…それ、覚えてたの」
キヨ「忘れるわけないだろ。…まぁ、こんなになるまで気づいてやれなかったけど」
キヨは私のとなりにしゃがみこんだ。
キヨ「少しずつでいいから、今まであったこと、
聞かせて」
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年10月22日 0時
