相良くんと高嶺の彼女２

31-1.不協和音 ページ31

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Aの習い事先に迎えに行くことが日課になり、最近では何曜日に何があるかを把握できるまでになった。
月曜日の今日はバレエ。

終わるまで後30分か…
さすがに早く着きすぎたな



「見つけたぜ」



不意に聞こえてきた声に振り返ると、そこには軟高でやりあったヘルメットがバット片手に立っていた。
突然現れた玩具に自然と口角が上がる。

最高の暇つぶしが向こうから来てくれるなんてなぁ
今日の俺はツイてるぜ



「さっきのヘルメットじゃねぇか。俺に何か用か？」


「お前を倒して、AAは俺がもらう」


「俺と殺ろうって？」


「ああ。俺が勝ったらAを譲れ」


「へぇ、なかなか面白ぇじゃねぇか。最近鈍ってたんだ。A待ちで、丁度暇してたから相手してやんよ。来いや」



智司は三橋と伊藤に手ぇ出させてくれねぇし、せっかく見つけたこの玩具はAの前じゃ思いっきりやれなかった。
これまでの鬱憤を晴らそうと、ヘルメット野郎を殴り、蹴り、その辺で拾った鉄パイプでぶん殴る。
地面に倒れたヘルメットは起き上がることも出来ないようで、転がりながら視線だけは俺を睨みつけていた。



「うっ…」


「弱ぇなぁ、お前。まぁ俺が強すぎるってのもあるけどよ」


「クソっ…」


「金輪際、Aの前に出てくんな。俺の女に手ぇ出したら次は殺してやるからよ」



ヘルメットの隣にかがみ、その顔を覗き込んで脅せば、俺から視線をそらす。
これでAが狙われることはないだろうと安心したのも束の間、立ち上がって振り返った先には習い事が終わったらしいAが立っていた。
持っていた鉄パイプを咄嗟に後ろに隠したが、何をしていたかは明白だった。



「早かったな。もう終わったのか？」



俺を無視してヘルメットに駆け寄ったAは『大丈夫？立てますか？』と声をかけ、カバンから取り出したハンカチを手渡す。
その光景が気に食わなくて、Aの腕を無理矢理引っ張り、家まで連れ帰った。



『…送ってくれてありがとう。それじゃあ』


「悪い。痛かったよな」



早々に家に入ろうとするAを引きとめ、俺のせいで少し赤くなったAの腕を撫でる。
Aはその手を弱々しく払いのけた。



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