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バイトの帰り道。
その日はなんだか少し歩きたい気分で、いつもとは違う道から帰っていた。
『触らないでっ』って声がして視線を向ければ、明らかに街から浮いたスーツ姿の女性が男に絡まれていた。
咄嗟についた嘘でなんとか逃げられたけど、彼女はその場から動こうとしない。
よく見れば、彼女は冬なのにコートも着てなくて、荷物も何も持っていなかった。
普段は自分から誰かを家に呼ぶなんてしない俺が、自然と彼女に声をかけていたのはきっと一目惚れだったんだと思う。
「ミルクと砂糖は？」
『あ、えっと…ブラックで大丈夫』
「どうぞ」
『ありがとう』
ソファーに座る彼女にマグカップを手渡し、その隣に座った。
スーツを着てしゃんと座る姿は周りには居ない大人の女性を感じさせる。
そんな彼女が両手でマグカップを持ち、猫舌なのか少しずつ珈琲を飲むギャップはなんとも可愛らしい。
『ごめんね。こんな遅い時間にお邪魔しちゃって』
「一人暮らしだから気にしなくていいよ。それに俺から誘ったし」
『一人暮らしいいなぁ』
「Aさんは実家暮らしなんだ」
『うん』
「結構時間遅いけど、連絡しなくて大丈夫？」
『…うん。平気』
「家族と何かあった？」
『…』
「話したくなければ話さなくていいよ」
『真一郎くんは優しいね』
不意に呼ばれた本名に心臓が跳ねる。
最近はピアノを弾く時に使っている伊達翼の名前で呼ばれることが多い。
Aさんにも伊達翼の名前を使おうか迷ったけど、彼女には"真一郎"って俺の本当の名前を呼んで欲しいと思った。
『ピアノ弾くの？』
「うん。音大に通ってるから」
『すごい！じゃあ、将来はピアニストだね！』
「どうかな。なれたらいいなとは思うけど」
ピアノを続けてるのは母さんの影響が大きい。
俺と母さんの唯一の繋がりだったから…。
ピアニストにはなりたいと思うけど、それよりも母さんが殺された謎が知りたい気持ちの方が大きい。
なんて、彼女には言えないな。
『私は学校の先生になりたかったの』
「なりたかった？」
『免許は取ったんだけど、今は全然違う仕事してて…』
「仕事好きじゃないんだ？」
『…そうかも。真一郎くんには好きなこと、仕事にして欲しいな』
そう言って、ピアノの前に移動した彼女が弾き始めたのはショパンのノクターン。
2人が出会った今日の夜を包み込むような優しい音色で、柔らかなAさんの雰囲気によく似合っている。
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ポル(プロフ) - すごくおもしろいです！続きを楽しみにしています！ (2020年7月11日 16時) (
レス) id: e5a0f78b99 (このIDを非表示/違反報告)
未亜(プロフ) - ゆーうさん» ゆーうさん、コメントありがとうございます！すごく好き…嬉しいです^ ^！！書き上げられるよう頑張りますね！ (2020年7月1日 22時) (レス) id: 6167177232 (このIDを非表示/違反報告)
未亜(プロフ) - ちーさん» ちーさん、いつもありがとうございます！ (2020年7月1日 22時) (レス) id: 6167177232 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーう(プロフ) - すごく好きなので最後まで応援してます！！ (2020年6月20日 0時) (レス) id: a3dde4f075 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - ゆっくりでもいいので頑張ってください！！ (2020年6月19日 6時) (レス) id: ef1b84f95d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未亜 | 作成日時：2020年4月28日 19時
