▽缶詰め少女と蜜の味 ページ5
その後の精密検査の後、目が覚めたと知らせを受けた両親と弟が駆け付けてくれた。その心底ホッとした
支配的な教育ではあるものの親の分類としては独善的なものなのだ。本当に、心からこの養育環境が私のためになっていると思っている。だからこそタチが悪いとされるのだけれど。
というのもだ。周囲の目に、私の環境はあまりいいものでは無いと映るらしい。しかし、幸いなことに私は勉学が好きだしこの缶詰めもさして苦ではない。数の美が詰まった数学と向き合うにも最高の環境が整っている。欲しい本も紙もペンも何もかもが揃っているのだ。
ただ、私に揃えられたこの部屋を他人は牢屋のようだと。私はその環境疑問も持てないほどに勉強詰めの生活が強いられている可哀想な子だと囁く。
そんなことはないのにね。私のこの頭脳はこんなにも知識を数式を欲し、環境はそれを満たしてくれるのだ。
私はこの環境に満足していた。
これに適応できなかった弟の分も私が背負える。
本当に何も苦ではなかった。
けれども私は知ってしまった。
これまで触れてこなかった娯楽に、悪魔に誘われるように手を出してしまった。
気まぐれで弟の誘いに乗ってしまったのが運の尽きだったのだと知ったのは彼らと出会った後で。
初めて両親に後ろめたい隠し事ができた瞬間だった。
＊＊
「20回目」
「?」
最推しの最後の姿が脳裏をチラついては胸が痛む。今日何度目かも分からない溜め息を吐くと、耳に心地いいテノールが頭上で鳴った。
「2限目の間に吐いた溜め息の数。ずっと上の空だったみたいだけど、何かあった? 皆心配してるよ」
「えっ」
パッと逸らされる周囲の視線に、私の憂鬱は授業妨害以外の何者でもなかったらしい。途端に憂いを遥かに上回る羞恥が頬に押し寄せ色を変えた。
「何でもないの。集中を乱してごめんなさい、期末も近いのに」
慌てて周囲に謝罪を述べれば周囲は曖昧に笑う。この学校という狭い世界では成績が全て。成績優秀者は敬われ、実力の及ばないものは下を向くしかない。落第者に至っては別校舎に追いやられ蔑む対象となる。道徳的にどうかという制度ではあるが、入学した以上は全員同意書にサインしているはずなので同情はしない。
そして、私が逆らえない同級生は理論上たった1人しかいないことになっている。そのため皆私の溜息に苛立っても口に出せなかったのだ。
悲しいけれどしっかりしなくては。
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ひよこまめ(プロフ) - 初めまして。閲覧、コメントありがとうございます。楽しんで貰えたようで冥利につきます。反映不備のご指摘ありがとうございます。ただいま修正して参りました。今後の展開を楽しみにゆるりとお待ちくださいませ。 (2019年7月13日 0時) (
レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
林 香織(プロフ) - ひよこまめさん» 初めまして！面白くて一気に読ませていただきました！これからヒソカへの暗殺、個人的には蜘蛛とどうなるのか気になります(笑)更新作者さまのペースで頑張ってください！1つ相談ですけど1番最新話が夢主の名前反映されてないので良けれは変更お願いしますm(_ _)m (2019年7月12日 7時) (レス) id: 3baa06326a (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - いらとやさん» コメント、応援をありがとうございます。大好きだと言って頂けて光栄の極みです。ぼちぼちのんびり更新していきますね (2019年7月2日 5時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
いらとや - 面白い！もっと伸びるべき神作品だ！この小説大好きです！応援してます！！ (2019年6月19日 16時) (レス) id: 9aad1e7bf8 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - ププさん» ありがとうございます。推しが一緒とは幸いです(*¨*) あまり早い更新はできませんが、楽しんで貰えるよう頑張ります (2019年6月11日 13時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこまめ | 作成日時：2019年5月15日 1時
