Epilogue ページ28
___桜の木には蕾が申し訳程度についてる。
気温も格段に暖かくなり、私は来ていたブレザーを脱いだ。
もうすぐ、
道枝先輩と出会ったあの季節がやってくる。
__『卒業証書、道枝駿佑』
大きな体育館にしては寂しげな、
パラパラとした拍手が響き渡る。
私はそれでも、彼のひとつの大きな節目を最大限に祝福しようと、手のひらが痛くなるくらいに大きな拍手を贈った。
道枝先輩は登壇し、校長先生からのお言葉を受けた後に証書を手に取った。
・
道「…ありがとう」
式が終わったあと、道枝先輩は私の隣に並んで少し照れながらそう言ってきた。
__どうしても道枝先輩の卒業式をやりたい。そう学校側に掛け合ったのが一ヶ月程前のことだった。
もちろん卒業式当日は道枝先輩は来ることは出来ない。でもその1週間後、数時間なら時間を取れると言ってくれたので、私と、学校幹部の重役の先生、担任という内密な形で式を行うことに成功した。
「いいえ。改めて__
卒業、おめでとうございます」
そう言うと、道枝先輩ははぁとため息をついて拗ねたように私の頬をつねった。
「ふぇ?」
道「…俺が近くにいないと不安なんだけど。他の男に取られそう」
「な!そんなことあるわけないじゃないですか!」
道「あるよ、A可愛いんだから」
まさかの道枝先輩からの褒め言葉に、返す言葉もなく口をぱくぱくさせながら赤面していると、当の道枝先輩は気にした様子もなく「あ、そうだ」と自身のスマートフォンを取り出した。
道「せっかくだし、写真撮ろ?」
「…!はい!」
まだ道枝先輩と付き合えてるなんて信じられない。
でも。
私が彼のとなりに居ていいのかとか、
気にするのはもう止めた。
道枝先輩はアイドルだけど
誰より人間的で、そして優しくて、ちょっとだけ皆のイメージとは違う。
そのことを知ってるのはきっと、
私だけだから。
道枝先輩の細い指がシャッターボタンを押す。
そのあと自然にくっついていた身体を離そうとすると、捕まえるかのように手を繋がれた。
道「せっかくだし、ご飯でも食べに行く?」
「ええ!?バレちゃいますよ!?」
道「んー、じゃあ俺の家?」
「……えええ!?」
ワンテンポ遅れて驚く私に吹き出した道枝先輩の笑顔は、
作り笑顔でも、
テレビの中のようなアイドルスマイルでもなく、
私だけに向けられるであろう
自然な笑顔だった。
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みみみみみ(プロフ) - 梅原裕さん» とても嬉しいお言葉ありがとうございます…😭😭読んでくださりありがとうございました!! (2022年11月15日 20時) (レス) id: 6d4045960a (このIDを非表示/違反報告)
梅原裕(プロフ) - 完結おめでとうございます✨最高すぎますよ!!!これは何回でも読める!! (2022年11月15日 15時) (レス) @page29 id: 0d3bb14795 (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - みちなが信者さん» 良かったです😭非常に嬉しいお言葉ありがとうございます😊ぜひまた新しいものが出たら読んでいただけると嬉しいです💘 (2022年10月22日 22時) (レス) id: 9e81ad151e (このIDを非表示/違反報告)
みちなが信者 - 完結おめでとうございます🎉毎日楽しみに見させてもらってました😊また、新しい作品がでたら見させていただきます🙏素敵な作品ありがとうございました❗️ (2022年10月22日 18時) (レス) @page29 id: 9b1daafc8e (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - みちなが信者さん» わああ今気づきました!教えてくださってありがとうございます!修正いたしました!😊 (2022年10月7日 19時) (レス) id: 26ad081759 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月28日 18時