36 お見舞い。3 ページ36
…
「あっっっち……」
「はは、ゆっくり食えよ」
軽く笑った真希は、もう一度Aからその椀を引き取って、かちゃかちゃと混ぜ始めた。
「真希ちゃんって、かっこいいよね」
ピタリ。真希の手が止まった。
へへ、なんて照れくさそうに笑う声が聞こえる。コイツは突然何を……なんて顔を見あげると、熱だか照れだかで顔を先程より赤くしたAがいた。
「……んだよ、急に」
「ずうっと思ってたよ。言うのが恥ずかしかっただけで」
恥ずかしいのかもぞもぞと座り直すA。少し視線を落としてまた口を開いた。
「初めて出会った時も、最初に声をかけてくれたのは真希ちゃんだった。
自分の術式を怖がって喋らない私に、真希ちゃんは自分のこと全部教えてくれたでしょ」
ふわりと懐かしそうに微笑むその顔は、齢16の少女が見せる
優しげに揺れる瞳に巻は言葉を失う。
「そんなの、別にどうってことないだろ」
はぁとため息をついて、話はそれだけかと言う。
恥ずかしくてこの話題を切り上げたかっただけなのだが、傍から聞けば不機嫌そうなその言葉の後黙った真希に、Aはまた笑って声をかける。
「ううん。あのね、真希ちゃん」
Aにとって、真希は全ての『初めて』だったのだ。
声をかけてくれたのも、
友達になってくれたのも。
最初は少し怖かったけど、それでも周りも気づかないような細かな気配りをいつもしてくれていた。
狗巻くんとはまた違う、不器用だけど細やかで、乱暴だけど丁寧なその優しさがどれだけ彼女の凍った心を溶かしたか。どれだけささくれた心を癒したか。
そんなことは、彼女の知る由もない。
「私、真希ちゃんみたいになりたいんだ」
──自分の道を自分で切り開こうとする貴女は、酷く眩しい。
Aの人との関わりの中で初めて抱いた願いもまた、真希だったから。
167人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みみず2(プロフ) - なおこちらのコメントは後日削除させていただきますので、必要であればお控えくださいますようお願いしますm(_ _)m (2022年4月26日 6時) (レス) id: c96996a763 (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 途中でも読みたいので教えてください❗ (2022年4月26日 0時) (レス) id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 大丈夫です。 (2022年4月26日 0時) (レス) id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
みみず2(プロフ) - みさにゃんさん» コメントありがとうございます。2作目の方が作品途中で更新停止してしまっていますがよろしいでしょうか? (2022年4月25日 2時) (レス) id: c96996a763 (このIDを非表示/違反報告)
みさにゃん(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございます❗ パスワードを教えていただきたいです。 (2022年4月24日 18時) (レス) @page48 id: 261ab17a8b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みみず2 | 作成日時:2021年2月23日 21時