12話 遠くにいても ページ13
「こんな時アクアさんなら…」
「アクア？？誰それ？」
「こいつらの仲間のとびっきり大きい【正義】を掲げたやつの事だ」
アルヌスはニコラスにむけて不敵な笑みを浮かべる。するとニコラスのへらへらした表情は崩れ去り無に帰した。
しかし、彼はそこから怒りを露わにすることはしない。
「正義……かあ……」
口元はかすかに笑っているが目は______笑っていなかった。
「そんな【偽善】、誰が信じると思う？」
刀が水色に怪しく光る。その刹那レイに向かって刃が突き立てられた。間一髪で受け止めるもその一撃は重い。レイの剣から発せられる炎はチリチリと燃えながら力なく火花を散らしている。
「正義ってものは容易く口に出していい言葉じゃないんだ」
ニコラスの力はとても強く、レイの足元にひびが入るほどだった。
「君達にとって正義とはなんなんだい？」
とんでもない怪力。次第につま先がミシミシと音を立ててきている。レイの体も限界を迎えてしまう。
「正義に答えはあると思う？」
「答え……ですか？」
「あはは、そうだね。僕は答えなんてないと思うんだ」
「答えも....答えも知らずに……彼女の抱く【正義】を【偽善】と....おっしゃるんですね」
「答えの無いものを掲げて誰が信じるんだい？そうやって虚勢を張った奴らを僕は…」
レイは俯いた後、薄れゆく意識の中ニコラスの方を向いて満面の笑みを浮かべた。
「正義はきっと、【追い求め、信じ、貫くこと】だと思うんです」
ふと異変に気付く。
「やべ....この俺としたことがお前らを面白がって周り見てなかった…」
レイの剣が放つ炎で分からなかった。いや、元から燃えていた家屋のせいで尚更臭いが感知できなかったのだろう。一際長く濃い煙柱が一本。白い煙が空に立ち込めていた。
「アクアさんならこんな時仲間を信じるはず…」
目線の先には、キチとユーカリ。
天まで届きそうな瑞々しい大樹の葉が勢いよく燃えている。レイが相手の気をそらしている隙に身を寄せ合って二人は協力して狼煙を上げたのだ。
「アルヌス」
「この俺に指図すんなって」
二人に向かって鎌を振り上げた。
アルヌスの動きが止まる。胸に数本刺さった暗器が肺や心臓に穴を開けて血がごぽごぽと溢れて＿＿
「間一髪で機転の回るやつらばっか…」
森をかき分けて三つの人影が現れる。
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作者名：ミミック | 作者ホームページ：https://twitter.com/neidangel
作成日時：2018年8月4日 21時
