0話 眠れる獅子 ページ1
怠惰。
彼を表すならこの二文字だった。
憤怒。
そしてこれが彼のもう一つの側面。
私は囚われの身。この脚に呪詛を宿す哀れな少女。
冷たい鉄の柵が張られた小さな窓から見えるのは夥しい数の死。レンガで出来た天井からは、赤黒い液体がポタポタと絶え間なく落ちていく。たまに頬をつたうこともあるがもう慣れてしまった。
どこもかしこも鉄臭いこの狭い場所に閉じ込められたのは【彼】が来てからである。突然現れた彼は民の腸(はらわた)を零し、燃やし、そして文字通り全てを奪ったのだ。無力な私は抗う暇もなく拘束され、今に至る。普段なら戦えたかもしれないが、運悪く『エマダハミ』の期間中だったのが運のツキだろう。能力を一時的に失ってるこの期間を狙ったということはきっと計画的な戦争だった筈だ。
もはや『あれ』は一方的な殺戮だったが。
この国にもはや未来はないのだろうか?
私はもう二度と地を駆けることができないのだろうか?
【姫】であるこの私は、国をもう守る事ができないのだろうか?
そう考えているうちに、彼女はゆっくりと眠りについた。
6人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミミック | 作者ホームページ:https://twitter.com/neidangel
作成日時:2018年8月4日 21時