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33.信じたい ページ33

「あんた……なんか雰囲気変わったわね。この短時間で何があったわけ?洞窟で遭難したとは聞いたけど、イルミ様があんたを担いでここに入ってきたときは、本当に肝が冷えたわよ」

「担いで……あっ!」

 そういえば、イルミにお礼を言っていない。洞窟から抜け出すだけで一苦労したはず。それでも自分を見捨てずに救ってくれたことに、Aの中で感慨深いものが込み上げてきた。

「次に会ったら、お礼を言わなきゃ!」

「……それはいいけど、あたしにも感謝してよね。瀕死のあんたに解毒剤を調合したのも、服を着替えさせたのも、ベッドに寝かせて世話をしたのも全部あたし。あの長男様は面倒なことを全部こっちにやらせてから部屋に入ったんだから!」

 ま、これが執事の役目だから文句は言えないけどね!と、頬を膨らませて言うアマネ。大人っぽい彼女がそんな表情をするのがなんだか可笑しくて、Aは思わず笑い出した。

「あははっ、アマネちゃんってイルミ様に結構突っかかるよね。……うん、ありがとう!私、アマネちゃんがルームメイトで本当によかった!」

 Aにはまだ、アマネ以外の見習いをよく知らない。けれど、もしほかの人がルームメイトになったら、こんなに気にかけてもらえなかっただろう。何の根拠もないけれど、Aはそう思った。最初に知り合ったのがアマネでよかった、と。ふと、イルミの忠告が頭をよぎる。

―――『お前の言う友達に、裏がないなんて証明できるの?』

(証明は、できない。でも……)

 信じたい、とAは強く思った。彼女と友達になりたい。この小さな競争社会では、誰もが敵。それでも、Aはアマネとだけは、心を通わせる仲間になりたいと願った。

「ば、ばか。よくそんな恥ずかしいことを笑顔で言えるわね」

 Aの屈託のない笑みを前に、アマネは赤面し、顔を背けた。えへへ、とAははにかむ。

「ちゃんとしたお返しはできないけど……もし、アマネちゃんがピンチの時は遠慮なく頼ってね!私ができることなら、なんでもするから!」

「……それはいや。だってあんた、要領悪そうだもの。頼んだことを更に倍にして返してきそう」

「ええ……」

 果てしなく信用がない。しかもちゃんと言い当てられてる。ガクリと肩を落とすAの姿を見て、アマネはふ、と口角を上げた。

「あんたはもうこれ以上トラブルを持ち込まないだけで充分!それに――」




……あたしも、Aがルームメイトでよかった。
その小さな呟きは、誰の耳に届くことなく、空気の中で溶けて消えた。

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設定タグ:イルミ , HUNTER×HUNTER , ハンターハンター   
作品ジャンル:アニメ
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バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - 甲賀忍者さん» ありがとうございます!ゴンのひたむきな真っ直ぐさを意識して夢主ちゃんを作っているので、ゴンのようだと言ってくれて本当に嬉しいです! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - slchang02さん» コメントありがとうございます!完走まで更新頑張ります! (2020年11月28日 23時) (レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 楽しく読ませていただいております!ゴンの様な真っ直ぐな夢主ちゃんの事応援してます! (2020年11月28日 20時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
slchang02(プロフ) - とても面白かったです。続きが読みたいです。 (2020年11月25日 1時) (レス) id: 270d07ae3d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:バナナの皮でも齧ってろ | 作成日時:2020年10月17日 2時

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