4.弱い奴 イルミside ページ4
「誰、こいつ」
父さんが誰かを紹介するなんて珍しい、と思いながらそう聞く。すると予想外の返答が帰ってきて、オレは思わず耳を疑った。
「ああ。この子はAといってな、今日からお前の専属にする」
「……冗談だよね」
だって、この子は『弱い』。
特殊な訓練をまともに受けていない一般人だということが丸わかりだ。
それでも執事服を着ているということは、つい最近養成所に入ったのだろう。
どうしてこんな奴が？普通に実力のある執事ぐらいごまんといるのに。
父さんはオレの心中を察してか苦く笑った。
「お前の言いたいことはわかる。確かにAは執事としては未熟だ。だが……」
父さんが少女の背中を押す。
オレの前に立たされた少女は、おずおずと「失礼します」とオレの身体の前に手をかざした。
すかさずその腕をつかむと、彼女は肩を震わせた。オレを見て、すぐに逸らされた怯えた瞳。そこには、オレにはない感情の波が渦巻いていて、見ていて気持ちが悪かった。
「なにするの。変なことをしたら殺すよ」
殺気を滲ませそう言うと、少女はいとも簡単に委縮する。今にも逃げ出しそうだ。
仮にも父さんが連れてきた奴なんだから、怪しいことはしないってことぐらいわかる。
それでも、こいつの存在がオレの中のなにかを苛立たせた。
「まあ、見ていろ。A、お前の能力を出してやれ」
父さんに声をかけられた彼女は、はっと顔を上げた。そして小さく「癒しの光(ペムリアン)」と呟いたかと思うと、彼女の両手のひらからぽう、と白いオーラが出てきた。
オーラがオレの身体に入り込む。すると、鍛錬で疲れ切っていた身体は、瞬く間に回復した。
さっきまで鉛のように重かったのに、今は驚くほど軽い。
「これ……まさか念能力？」
回復系が使える念能力者なんて初めて見た。少女はこくりと頷く。
「最近の鍛錬はお前にとって少しハードかと思ってな。ここのところ、ずっと身体が重たいだろう。仕事でできた傷もなかなか治らないと執事から聞いている。Aなら、お前のサポートができるぞ」
なに、それ。
父さんの説明を聞きながら、オレは自分の中からどす黒い何かが湧き上がってくるのを感じた。
それってさ、つまり
父さんまでもが、オレが劣ってるって言いたいの？
こんな回復しか能がなさそうな弱い奴専属にするほど、オレは父さんの目から見て頼りないわけ？
自分の中で、なにかがぷつりと切れた音がした。
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バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - 甲賀忍者さん» ありがとうございます！ゴンのひたむきな真っ直ぐさを意識して夢主ちゃんを作っているので、ゴンのようだと言ってくれて本当に嬉しいです！ (2020年11月28日 23時) (
レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - slchang02さん» コメントありがとうございます！完走まで更新頑張ります！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 楽しく読ませていただいております！ゴンの様な真っ直ぐな夢主ちゃんの事応援してます！ (2020年11月28日 20時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
slchang02(プロフ) - とても面白かったです。続きが読みたいです。 (2020年11月25日 1時) (レス) id: 270d07ae3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バナナの皮でも齧ってろ | 作成日時：2020年10月17日 2時
