20.屍 ページ20
あれから半日。再び静まり返った洞窟内の湿った地面に、二人は腰かけていた。
結論から言うと、この洞窟は地下に棲む吸血蝙蝠の巣だった。餌がきたと喜んだのも束の間、イルミに仲間を瞬殺されたのを見た蝙蝠たちは岩壁に逃れ、大人しくなった。どうやら格上相手には攻撃しない事になっているらしい。頭の良さは、地上の蝙蝠より一段上だ。
そんな蝙蝠の群れを抜け、洞窟の更に奥へ進んだ二人。しかし、どんなに進んでも出口は見えてこず、眼前には長い一本道が広がるばかり。そのうち、Aの放つ
「少し休もう」
話しかけられたことに驚き、え、とAは頭を上げた。
イルミから「お前には無理だね」と言い切られてから、Aは視線を地面から上げることができず、俯き続けていた。自分の情けなさ、甲斐性のなさが腹立たしい。そして何より、赤い液体にまみれてもなお表情一つ変えないイルミに、恐ろしさが再びこみあげてきていた。絶命した蝙蝠の屍が、脳裏に焼き付いて離れない。
……わかっている。相手は暗殺者だ。血なんて飽きるほど見てきたに決まってる。
それでも、Aに与えられたショックは、肉体と精神、両方とも多すぎた。
「いえ、まだ……まだいけます」
うわ言のように言うAの言葉を、イルミはまともに取り合わなかった。
「何を変に強がってるか知らないけど、無理だよ。光が弱くなってる」
そう言って、イルミは適当に洞窟の一角に腰かけた。Aもふらふらとそれに倣う。
一定の距離をとり、座り込む二人。向かいに座るイルミが自らの服の裾を破るのを、Aはただぼうっと見ていた。
「水」
その手がそのままAに向かって伸びる。反応しきれずにいると、「血が乾いて拭けないから。早く」と急かされた。慌ててバッグを開け、水を取り出す。。一緒に毛布と食料を渡そうとするが、「それはいらない」と拒否された。
「暫く眠りなよ。体力が回復すれば光も戻るでしょ」
「イルミ様は……」
「オレは休まなくても平気だから」
先を急ぐんだから早くね。と言われ、Aは毛布に包まりながら、濡れた布で淡々と血を拭くイルミの手を見た。
……あの手で、一体何人殺してきたんだろう。
自分ももう直ぐ、その手で心臓を貫かれるに違いない。
あの蝙蝠たちのように、物言わぬ屍となって地面に転がるのだ。
(もう……考えたくない)
Aは逃げるように目を閉じた。
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バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - 甲賀忍者さん» ありがとうございます！ゴンのひたむきな真っ直ぐさを意識して夢主ちゃんを作っているので、ゴンのようだと言ってくれて本当に嬉しいです！ (2020年11月28日 23時) (
レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - slchang02さん» コメントありがとうございます！完走まで更新頑張ります！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 楽しく読ませていただいております！ゴンの様な真っ直ぐな夢主ちゃんの事応援してます！ (2020年11月28日 20時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
slchang02(プロフ) - とても面白かったです。続きが読みたいです。 (2020年11月25日 1時) (レス) id: 270d07ae3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バナナの皮でも齧ってろ | 作成日時：2020年10月17日 2時
