11.特訓開始 ページ11
予想外の制度を聞いて固まるA。『暗殺は評価基準にもなる』……もはや黙認というより推奨だ。いかに美しく殺し、尚且つ『自分がやった』と暗示できるか。それがアピールできれば、特別な才に秀でてなくても、正式な執事への道が一気に見えてくるというのだ。
「で、でも！私の回復能力は結構珍しいって聞いたよ。シルバ様がなんの手も打たないとは思えないけど……」
「ん。あんた、ぼけっとした顔の割に考えてるわね。……けど残念ながら、それは期待するだけ無駄よ。確かにあんたの能力は珍しい。けれど、回復はあんただけの専売特許じゃないわ。似たような能力を持つ人はそれなりにいる。そして、ゾルディック家の財力をもってすれば、彼らを雇うのは造作もないことなの。つまり、」
『回復役』としてのあんたは、幾らでも替えが効くのよ。
アマネの言葉が、まるで海に沈む重りのように、Aの心を暗く沈ませた。
「じゃあやっぱり私、狙われてるんだ……」
「だから最初からそう言ってるでしょ？はい、無駄話は終わり。早速今日から特訓を始めるわよ」
きらり。特訓というワードを口にしたアマネは、先ほどと打って変わりイキイキとし始めた。
Aはドギマギしながらアマネを見る。経験上、人がこうするときは大抵、ロクなことがない。一体どんな内容なんだろう、と固唾を呑んだ。
こほん、とアマネが咳払いをする。一気に厳粛さが漂う中で、彼女は声高に宣言した。
「特訓内容はずばり……重し付きでククル―マウンテン一周よ！」
「ええ！？一周……！？」
ククル―マウンテンは標高3722ｍの死火山。とても初心者が2日で周り切れる高さではない。その難易度の高さに驚愕を隠せないでいると、アマネは「ああ、違う違う」と手を振った。
「体力がない素人に登頂は無理よ。一周とは言ったけど、上りと下りで合計1600ｍ、つまり一日800ｍクリアできればいいわ。私たちがいる執事室が600ｍ地点にあるから、一日目はここから1400ｍに到達、二日目はそこから執事室に戻るのが目標ね。これで基礎体力を増やす」
「骨折しててもいいの？」
「大丈夫よ。……で、本題はこれ」
どん、とAの目の前に置かれたのは、鎧のごとき重そうなベスト。まずは10�圈△肇▲泪佑碗譴�。
「これを着て訓練に励むこと。言っとくけど仕事に復帰しても続けてもらうからね。そして目標は……二ヶ月後、試しの門の一の扉を開くこと！」
生きるための険しい特訓が、今始まろうとしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - 甲賀忍者さん» ありがとうございます！ゴンのひたむきな真っ直ぐさを意識して夢主ちゃんを作っているので、ゴンのようだと言ってくれて本当に嬉しいです！ (2020年11月28日 23時) (
レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - slchang02さん» コメントありがとうございます！完走まで更新頑張ります！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 楽しく読ませていただいております！ゴンの様な真っ直ぐな夢主ちゃんの事応援してます！ (2020年11月28日 20時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
slchang02(プロフ) - とても面白かったです。続きが読みたいです。 (2020年11月25日 1時) (レス) id: 270d07ae3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：バナナの皮でも齧ってろ | 作成日時：2020年10月17日 2時
