2.癒しの力 ページ2
「お、お呼びでしょうか！シルバ様」
ツボネが連れてきた少女を見た途端、シルバの期待はみるみる落胆へと変わっていった。
見た目十歳ぐらいのその娘は、どこからどう見ても普通の子で、オーラのかけらも感じられない。
おまけに緊張しているのか、きょろきょろとあたりを見回しては不安そうに眉を下げている。
感情が表情に出すぎだ。執事はおろか、まだ執事見習いとしても全く基礎ができていない。
ツボネの推薦を疑うつもりはない。が、こんなのが本当に役に立つのだろうか。
「お前がAか」
「は、はい！」
「ツボネから話は聞いている。治癒能力が使えるようだな」
かの執事は、少女を養成所に入れる際、仲介屋からあらかじめ能力のことを聞いたのだった。
ゾルディック家の執事は、そのほとんどが仲介屋を通して見習いとなる。
自ら志望するもの、路頭に迷ったもの、人から売られたもの。そんな少年少女らの中でも秀でたものを、仲介屋は拾い上げて養成所に回す。この少女も例外ではなく、仲介屋から「珍しい念能力を持っている」とお墨付きまでもらって、ゾルディックの家門をくぐったのだった。
しかし、養成所に入ってまだ日が浅いため、まだ誰も彼女の能力を見たものはいない。
少女はおどおどしながらも、「はい」と答えた。
「どんな傷を治せる」
「え、ええと……切り傷とか腫れとか、です」
そんなものなのか。シルバは思わず眉をひそめたが、まあいい、とすぐに思い直した。
しどろもどろな説明を聞くより、実際に試してみたほうが早い。
「ではこの傷を治してみろ」
少女が反応を示すのを待たずに、シルバは右手で自分の左腕を強くつかんだ。
途端に左腕がボキリと音を立てる。顔色一つ変えずに行われたことだが、その腕が折れているのは明白だった。
「なっ……」
驚愕で目を丸くする彼女に、シルバは言う。
「最低でもこれくらいは治癒できなければな。話はそれからだ」
治せなければ、わかるな。
低く響いたその声に、少女はビクリと身を震わせた。
気づけば自分の背後には、刃物を持つツボネが控えている。
治せなければ、死――――
「っ、癒しの旋風(グリーンヒール)！」
少女が念を唱えた瞬間、その手のひらからは小さな緑の旋風が巻き起こった。風は少女の意思のままシルバの腕へとまとわりつき、次の瞬間、折れた腕は元通り。全ては一瞬の内に終わった。
「ほう……」
この時、シルバは確信した。彼女はイルミを救う「鍵」になるのだと。
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バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - 甲賀忍者さん» ありがとうございます！ゴンのひたむきな真っ直ぐさを意識して夢主ちゃんを作っているので、ゴンのようだと言ってくれて本当に嬉しいです！ (2020年11月28日 23時) (
レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
バナナの皮でも齧ってろ(プロフ) - slchang02さん» コメントありがとうございます！完走まで更新頑張ります！ (2020年11月28日 23時) (レス) id: 8e43bab9f5 (このIDを非表示/違反報告)
甲賀忍者(プロフ) - 楽しく読ませていただいております！ゴンの様な真っ直ぐな夢主ちゃんの事応援してます！ (2020年11月28日 20時) (レス) id: 0e780aa7b5 (このIDを非表示/違反報告)
slchang02(プロフ) - とても面白かったです。続きが読みたいです。 (2020年11月25日 1時) (レス) id: 270d07ae3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：バナナの皮でも齧ってろ | 作成日時：2020年10月17日 2時
