第三話 ページ5
≪フランside≫
時刻は夜の８時――商店街も賑わいが薄れていく時間帯では、「ゆきひら」への来客も減っていった。
「あ〜食ったー！ ごちそーさ〜ん！」
「まいどありー」
お客がまた２、３人お帰りになると、店内に残った客は私だけになった。
「そろそろ七輪の火ィ落としてくれ、……創真？」
「……」
城一郎さんの声に反応を見せない創真は、コップを拭くのに集中している……訳ではなさそうね。彼は今、考えている――。
(今日の炒飯……あと３回は鍋を振るべきだった。あと数か月で中学卒業……そうしたら、もっと料理の修行が出来る！)
一日も早く、親父を超える！ そして、この店を背負って立つ料理人に――！ 創真の目標ははっきりしている。“父親を超える料理人になる”こと、まあ……今の創真じゃ到底、敵わないだろうけど――。
「……なあ、フラン。俺の炒飯どうだった？」
熱々のお茶を飲んでいると、急に創真がそう聞いてきた。
何てアバウトな質問……。声のした方へ顔を向けながら、思ったことを一言だけ伝える。
「“美味しかった”ですよ」
「“美味しかった”、かぁ……。フランは誰の料理を食べても、それしか言わねーよな」
「『誰の料理』でもって訳ではありませんよ？ それに、美味しい物に「美味しい」と言うのは当然です」
「けど、逆に言えば――“それ”しかねーんだろ？ フランに最高位の“美味しい”を言わせれる奴は、そんなにいねーからな」
確かに、城一郎さんの言葉は当たっている。それでも、『最高位の“美味しい”』っていうのは大袈裟な気も……――
まあ、いっか！
「いつかフランに、“美味しい”以外のこと――言わせてやるよッ！」
「おい創真、それ言うの何度目だ？」
「うっせーッ！ そう言う親父はフランに“美味しい”以外言われたことあるのかよっ？！」
「「……」」
ビシッと城一郎さんに人差し指を向け両眉を上げているであろう創真に、私と城一郎さんは顔を見合わせる。
そっかぁ……創真は知らないんだね――
「フフ……」
「？ どうした？ フラン」
「いいえ、何でもありません」
「？？」
初めて私に“美味しい”以外のことを言わせた料理人は……――
ガララ――ッ
「ごめん下さい」
城一郎さん、なんだよ――。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか？ (11月30日 16時) (
レス) @page28 id: de2c41cb59 (このIDを非表示/違反報告)
プリン(プロフ) - 遅くなってすみません(>_<) 白桜姫さん！ ありがとうございます！！ 更新再スタートさせようと思いますので、これからもよろしくお願いますッ(^^) (2019年1月6日 11時) (レス) id: 024f204e7f (このIDを非表示/違反報告)
白桜姫 - 続きが見たい。お願いします(´･ω･`) (2018年12月16日 5時) (レス) id: a386c69c5e (このIDを非表示/違反報告)
プリン(プロフ) - ありがとうございますッ(≧▽≦)！！ ご期待に応えられるように頑張ります！！！ (2018年5月6日 8時) (レス) id: a29d263bfb (このIDを非表示/違反報告)
花 - お話の続きを楽しみにしてます(^○^) (2018年5月4日 22時) (レス) id: 85f6f855e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プリン x他1人 | 作成日時：2018年3月13日 6時
