白翼の乙女【改】 (ページ10)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:427 hit

10枚ページ10

次に見たのは炎だった。
いやわずか数分目を話した隙に何があった?
なんでさ?

その炎を見て天妃はとある女性を思い出す。
彼女は愛を強く欲すも子供を平気で殺す残酷な美しき女性だった。
それに対してこの炎はまるで反対だ。
残酷に焼き尽くす炎でありながらもそれはどこか守るための炎に感じた。

「なるほどこれが羽羽方さんが抱えていたものか。」

重いな。
ただ一言そう呟いた。
空を見上げればセクメト女神のマガイが浮いていた。
セクメト、ラーの目から生まれた太陽の威光を体現した神。

「なんで貴様がここにいるんだ？」
「兄者。」

いつの間にか自分と似た青年がいた。

「仕事帰りに生徒が悩んでいたようなので話を聞くついでに飲み物を買ってきたら視界一面が炎でした。オタクの妹さんのマガイ？」

「ああ。あれが原因で声が出せなかった。
だが今宵は月が来た。人はきっかけさえあれば自由に飛べるんだ。」

月に手を伸ばしたその先に大神官はいた。
冥界の番狼を召喚する。

「やはりその地位を剥奪されても実力は神クラスだな。
いやはや歳はとりたくないね。」
「ここ数年変わってない癖に。」
「申し訳ないがその言葉、そのまま兄者たちに返すよ。」

巨大な火の玉が彼に向かうも跳ね返されこちらに向かって来る。

「おっと。」
「馬鹿‼」

自分たちがいた橋を見ると焼け落ちていた。

「うっわ爆薬かよ。」
「うーん愛が重い。」

月の神官は宣言する。

「貴様はお祓い箱だ‼」

そうして夜に浮かんだ太陽は消えた。

陽乃芽は体力が尽きて眠ってしまったようだ。
今なら会話ができるが…

「おい貴様らそこにおるのだろう？」

あ、やっぱりバレてたか。

「やはりバレていたか。」
「未成年が夜に出歩くには教職につく者以前に良識ある大人として見過ごせないかなー。」

いやそこじゃないと隣から突っ込まれるが天妃は口笛を吹いて誤魔化す。
誤魔化し方下手か。