白翼の乙女【改】 (ページ8)

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「あれ?羽羽方さんじゃない。」

天妃は夜中に一人でいた自分の担当するクラスの生徒見たので声をかけた。

「御空先生！」

「初めて声を聞いたけど実に可愛らしいね。
うん、綺麗な声だ。」

まるで口説き文句である。
美女の言葉に思わず陽乃芽は顔を赤らめた。

「だが少々いただけないね。こんな時間に女の子が一人で出歩いちゃダメでしょ?
かくいう私もしょっちゅう弟から鬼電が来るんだがね。」

スマホの画面を見せる。
着信履歴にハルちゃんという人物からかなりの数が表示されている。

「とにかく送ってあげるからおうちに帰りなさい。
親御さんに連絡くらい入れてあげるから……。」

陽乃芽が大事そうに抱いているものを見る。
箱だった。かなり古くかれこれ20年近いものなのではないだろうか。
彼女の家族を思い出す。おそらく意匠から母親の形見か何かなのだろう。
どこか羨ましく感じる。

ため息を吐く。

「ベンチがあるからそこに座ってて。温かいものを買ってこよう。
知らない人について言っちゃダメだからね！！先生の奢りだからね！！！」

何はともあれ生徒が悩んでいるのならそれを聞いてあげることも教師の役目である。
正直この容姿で何度か補導にかかった。2丁目で。
悲しいことかな。オカマのオネェさま方に可愛がられてんだよな。
来世は普通に男がいい。ただし女性トラブルが絶えない人生はやだ。

近くの自動販売機に千円札を入れる。
女の子は体を冷やすと辛い。先ほど言った通り、温かい飲み物のボタンを二つ押す。