あなたは既婚者 （ 完結 ）

（８）やさしい人 ページ8

Aside





『今日は帰ります...』






泣き疲れた私は、お酒を飲む気分じゃなくなった。







會澤「気をつけてね」


『ありがとうございます』





會澤さんに軽く返事をして店を出る。

いま、化粧くずれてるよね....
目も赤くなってるだろうし、知り合いに会わずに帰りたいな。








「A...さん？」


『え？』







下を向いていた顔を起こしてみると、前には、西川さんがいた。

やばい。化粧落ちてるのに...







西川「大丈夫ですか？」


『だ、大丈夫ですっ』


西川「我慢したらダメやで」


『...っ』








西川さんに腕を引っ張られ、そのまま抱きしめられた。

西川さんの匂いに包み込まれる。






西川「目、真っ赤やし、大丈夫そうにはなさそう」


『.....』


西川「もう一軒、付き合ってください」


『....はい』






西川さんに手を引かれ、近くの居酒屋に行った。






西川「個室ありますか？」






ちょうど個室が空いており、すぐ入ることができた。

西川さんが手を繋いで案内してくれるおかげで、人に顔を見られずに個室に入ることができた。






『ありがとうございます』


西川「そんなお礼言われると照れるんでやめてください」






笑顔で話してくれる。
さらっとこういうことしてくれるの良いな。かっこいい。



〜♪

私の携帯が鳴った。








『え.....』


西川「どうしたんすか？」


『野村さんから、電話が...』


西川「出るん？」


『....どうしよう』


西川「出んでええんとちゃう？
Aさん、今出るのしんどいでしょ」


『....じゃあ、また今度かけなおします』







笑顔で頷く西川さん。
こんなに心配されること初めてかも。








西川「連絡先、交換しといていいですか」


『い、いいですよ』


西川「やった！」







爽やかな笑顔で携帯を出し始めた。
ちょっとドキッとした自分がいた。







『あっ』


西川「野村さんからですか？」


『はい』


西川「野村さんと付き合ってるんですか」


『...付き合ってないです』


西川「ほんまにっ？やった！」


『？』







よくわからない反応。







『私って野村さんと付き合ってるように見えますか？』


西川「なんでそんなこと聞くん？」


『えっと、會澤さんに同じこと聞かれたので』


西川「だって、俺に見せる笑顔と祐輔さんに見せる笑顔、全然違うんだもん」


『え？』


西川「まさか、自覚なかったんですか？笑」




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