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「ふっ! ぅらあっ!」
何度か手首を殴られた男が手を開く。襟元を掴んだカイ君が壁に男を押し付けて、そのまま殴ろうとした。
「あっ……! はっ……!」
「カイ君!!」
カイ君が動きを止めて体を曲げる。その横腹には、まだ離していなかったナイフの先端がカツカツと突き立てられていた。
「カイく、」
「うらあっ!」
顔を挙げたカイ君が、思いっきり頭突きをする。よろけた男にジロちゃんがすかさず蹴りを入れた。
「カイ君! 大丈夫!?」
額を抑えるカイ君に駆け寄る。ナイフを突き立てられていた横腹を見ると、青いシャツには血は滲んで居なくて。良かった、と少し安心した。
ふらつくカイ君の肩を支えると、ジロちゃんもパタパタと駆け寄ってくる。
「大丈夫!?」
「あぁ……大丈夫」
「良かった……」
はあ、と息を切らしたカイ君が、片手で青いワイシャツの裾を捲った。チラリと見えたのは白いコルセット。どうやら、ぎっくり腰のコルセットが盾になってくれたらしい。
「間に合った」
「間に合った……」
「良かった……!」
床で伸びる男と、ベッドで眠る野々村さん。刺されてしまう前に止めることが出来た。はぁ、と3人で息を吐いた時、「本間! 一ノ瀬! 黒羽!」と山西警官の声が廊下に響いた。
振り向くと、奥から走ってきたのは山西警官の他に篠田警官やその他の刑事さんの姿。慌てて敬礼をすると、山西警官が驚いたように私達と後ろの男を見る。
「お前ら……」
「通報後、待ちきれず走ってしまいました」
「すいませんでした!」
「「すいませんでした!!」」
ジロちゃんの言葉に続いて、カイ君と私も同時に謝る。怪我もなかったこと、犯人を倒し、野々村さんの命を救うことが出来たのもあり、特にお咎めを受けることなく男は連行されて行った。
そして。
入れ替わるように曲がり角から歩いてきたのは、稲西巡査部長と、手首に手錠を嵌めた晴至さんだった。
敬礼をする私たちに、稲西刑事がにっこりと笑う。
「……公務執行妨害の容疑で逮捕し連行中だが、その前に傷の手当て連れて来た」
そう話す稲西刑事の隣に立つ晴至さんの顔はところどころ血が滲んでいて。
でも、一通り手当てはされているのに病院まで連れてこられたのは、稲西刑事の配慮だった。
「──晴至さん」
カイ君が、静かに一歩前に出る。
カイ君の呼びかけに、晴至さんは初めて私たちの方に視線を向けた。
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弥生(プロフ) - 三神奈津美さん» いつも読んでくださりありがとうございます( ´ ▽ ` )ノガードわんこもつけ麺も可愛かったですよね(^^)そんなこと言われちゃうと書いちゃいます…8話では難しそうなので9、10話のどこかにねじ込もうかな。これからもお付き合いください( ´ ▽ ` )ノ (2020年8月26日 0時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
三神奈津美(プロフ) - いつも拝見させて頂いています。私も"ガードわんこ"好きなので、ぜひ弥生さんの作品の中でも見たいです! (2020年8月25日 14時) (レス) id: 7b45036589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生 | 作成日時:2020年8月14日 17時