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ジロちゃんのメッセージの通りだ。きっと、代わりの人質、として片野坂教官がここに来る。
「部屋の温度を下げて。それなら人質の交換を認める」
直子さんがそう言う。片野坂教官とカイ君がここでプロファイリングして、あとは。
「あとはジロちゃんか」
カイ君が、静かにそう呟いた。
あとはジロちゃんが、無事に『証拠』を持って帰ってきてくれたら。
・
『──待って』
外に出ようとしたジロちゃんを、直子さんが呼び止めた。
『実は今日、もう一人会うつもりの人がいた。ムラタミキっていう人』
ムラタミキ? さっきも聞いた名前だ。確か、殺すって。
キョトンとした表情で直子さんを見るジロちゃん。カイ君が車椅子を動かして2人の近くに移動する。
『え、それって……』
『電話ではとっさにああ言ったけど、殺すつもりなんかないしもちろん仲間もいない』
『ムラタさんってどんな人なんですか?』
『面識はなくて、父との関係も分からない。ただ、先週連絡をくれた。父が無実だって証拠を持ってるって』
『じゃあ、それと及川助教の証言があれば……!』
天満暁生が無実だって、警察は認めるしかないんじゃ。
『どこで会うつもりだったんですか?』
ジロちゃんの言葉に、直子さんがスマホを操作して画面を見せる。
『コーナンフ……トー、トー。コーナンフ、トートー?』
コーナン? ホームセンターで待ち合わせしてるの?
ジロちゃんの呟きに首を傾げていると、『何言ってんだよ』と智也さんが髪をくしゃくしゃさせる。
『港南ふ頭10だろ!』
『地図苦手だから! もう……コーナンフト、トー……』
港南ふ頭10でコーナンフートートーか。まるで何かの呪文みたいだ。
果たして地図が苦手なことと関係あるのかは分からないけど、ジロちゃんが無事にたどり着けるのか心配になってくる。
『カイ君、私も外出ちゃダメ?』
『は? 人質は1人だけ解放つってんだろ』
カチャリ、と智也さんが銃をこちらに向けた。そうだけど、そうだけどさ。心配なんだもん。
『Aも一緒に行って欲しいけど、怪我人を外に出したら嘘ついた意味が無くなる』
『だよねー』
はぁ、とカイ君が額に手を当てた。私も地図は苦手だからジロちゃんの気持ちは分かるよ。港南ふ頭10は覚えられるけど。
『ジロちゃん頑張ってね』
『Aまかせて!』
ビシ、とグーサインを私とカイ君に出して、ジロちゃんは廊下へ出た。
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弥生(プロフ) - 三神奈津美さん» いつも読んでくださりありがとうございます( ´ ▽ ` )ノガードわんこもつけ麺も可愛かったですよね(^^)そんなこと言われちゃうと書いちゃいます…8話では難しそうなので9、10話のどこかにねじ込もうかな。これからもお付き合いください( ´ ▽ ` )ノ (2020年8月26日 0時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
三神奈津美(プロフ) - いつも拝見させて頂いています。私も"ガードわんこ"好きなので、ぜひ弥生さんの作品の中でも見たいです! (2020年8月25日 14時) (レス) id: 7b45036589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:弥生 | 作成日時:2020年8月14日 17時