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「お２人のような人間を育てたお父さんが、家族を……お母さんを殺すはずがない」
カイ君の少し震えた説得に、直子さんと智也さんがそっと目を伏せる。
こんなにもまっすぐにお父さんを信じてるんだ。お父さんが人を殺すなんて、そんなの信じられない。
「及川助教ももう限界です。このままじゃ失血死する！
……でも、今ならまだ間に合う！ お父さんも、まだ間に合う！
まだ死んじゃいない。諦めちゃダメだ！」
カイ君が力強く叫んだ。その言葉に、直子さんの顔がくしゃりと歪む。
「……っ！」
突然、カイ君が車椅子の手すりを掴むと立ち上がりだした。慌てて、腕を回して支える。ずし、と体重が掛かったけど、よろけずに手伝った。カイ君も私の腕に身を預けながらゆっくりと背を伸ばす。
「お父さんを愛してるなら、ここから出ましょう」
「間に合わなかったら、きっと後悔します……！」
直子さんが、涙を堪えるように目を瞑った。
カタカタと震える、銃を持つ右手。それに、カイ君がそっと手を伸ばす。
ゆっくりと、黒い銃がカイ君の手に渡った。その瞬間、バタリと力が抜けたように直子さんが及川助教の隣にしゃがみこんで手をつく。
「うっ……うぅ〜……っ！ うああ……！」
教室内に響く、直子さんの嗚咽。
手も顔も床について、号泣する直子さんの背に、及川助教がそっと左手を乗せた。
「ごめんなさい……！」
智也さんが、虚ろな目で直子さんを見る。
その光景は、きっとこの２人が一番望まない光景だった。
・
「助教！」
「助教、聞こえますか!?」
脂汗を浮かべた助教の顔色は、真っ青だった。
隣にしゃがんで肩を叩くけれど、反応が無い。
直子さんと智也さんは、片野坂教官と共に廊下に出て行った。
開け放たれたドアの外からは、バタバタと足音がする。もうすぐ病院へ運べる。だから助教、あと少しだけ……！
防護用の盾を持ったSAT隊員が、教室内に入ってきた。車椅子のカイ君の傍に１人、それから、ぐったりと座り込む助教と腕にハンカチを巻く私の傍にも１人ずつやって来る。その後、白い担架も運ばれてきた。
「その腕は、どうされましたか？」
「銃弾が掠りました。血は止まってます」
「分かりました。すぐに病院へ」
頷く私の横、担架に乗せられた助教が運れていく。
こうして私たちは、数時間ぶりに教室の外へ出ることが出来た。
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弥生(プロフ) - 三神奈津美さん» いつも読んでくださりありがとうございます( ´ ▽ ` )ﾉガードわんこもつけ麺も可愛かったですよね(^^)そんなこと言われちゃうと書いちゃいます…8話では難しそうなので9、10話のどこかにねじ込もうかな。これからもお付き合いください( ´ ▽ ` )ﾉ (2020年8月26日 0時) (
レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
三神奈津美(プロフ) - いつも拝見させて頂いています。私も"ガードわんこ"好きなので、ぜひ弥生さんの作品の中でも見たいです！ (2020年8月25日 14時) (レス) id: 7b45036589 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生 | 作成日時：2020年8月14日 17時
