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直子さんが上を向いて息を吐く。及川助教も片野坂教官も、言葉には出さないけれど失望した表情を浮かべた。

 なんで、どうして。こうも上手くいかないものか。


「……まだ諦めるのは早いって。壊れても復元出来るかもしれない。それ持って戻ってきて」

『分かった』

「ジロちゃん、気を付けてね」

『……うん。ありがとA』


 通話が切れる。復元出来るか分からないし、今すぐには天満さんの無実が証明出来ない状況になってしまった。

 八方塞がりだ。どうすればいいか分からない。


「なんで……なんでこんなことになるんだよ」


 智也さんがそう呟く。その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。直子さんの表情は固まったままだ。


 ──ピロピロピロ


 教室内に、初めて聴く着信音が流れる。直子さんが、バッグの中を探るとスマホを取り出した。


「……はい」


 疲れきった声で、直子さんが電話に出る。それから。


 後ろ姿でもよく分かるくらい、直子さんの纏う空気が震えたものに変わった。そろそろと、耳に宛てたスマホが降ろされていく。


「姉さん? どうした?」

「父さんが……危篤だって」


 涙を堪えるような、そんな声が教室内に落ちた。

 思わず凝視する直子さんの後ろ姿。ひく、と息を吸う音が響く。


「会いたいなら、今すぐ来いって……!」


 そのまま、直子さんの泣き声が響く。


「なんでよりによって今なんだよ……」


 智也さんが、怒りを抑えるように銃を太ももに叩きつけた。


「親父が死ぬ前に、無実を……。親父の無実を証明したかった……!」


 智也さんがそのまま、机にもたれかかった。ひぃ、と泣き声が聞こえる。


 何も言えない。何て声を掛ければいいのか、分からない。

 お父さんの無実を証明するために人生を捨てた2人にとって、この結末はあまりにも残酷だ。


 項垂れる智也さんを見つめていると、直子さんがそっと動いた。智也さんの背中に手を添えてしゃがみ込むと、そのまま右手に持った銃に手を重ねる。

 呆然とした表情のまま、直子さんが銃を抜き取った。智也さんも放心状態のままで。それから立ち上がる直子さんに、カイ君が車イスの向きを変えた。


 直子さんはカイ君に銃を渡そうとして、カイ君は受け取る為に手を差し出して。



 それから、カチャリ、と銃口をこめかみに当てた。

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弥生(プロフ) - 三神奈津美さん» いつも読んでくださりありがとうございます( ´ ▽ ` )ノガードわんこもつけ麺も可愛かったですよね(^^)そんなこと言われちゃうと書いちゃいます…8話では難しそうなので9、10話のどこかにねじ込もうかな。これからもお付き合いください( ´ ▽ ` )ノ (2020年8月26日 0時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
三神奈津美(プロフ) - いつも拝見させて頂いています。私も"ガードわんこ"好きなので、ぜひ弥生さんの作品の中でも見たいです! (2020年8月25日 14時) (レス) id: 7b45036589 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生 | 作成日時:2020年8月14日 17時

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