ねえ、拐ってよ 【怪盗キッド】

拐ってよ。１ ページ1

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『キッド、キッドです！怪盗キッドが現れました！』




ニュースキャスターがそうほざく。
最高に下らないし、アホらしい。



何であんな怪盗にキャーキャー言えるのか私には理解不能。勿論、イケメンは好きだけど…泥棒は別。

だって、もの盗む人なんて大嫌いだから。



私、大学生のAはテレビをぼんやりと見ながらそう思う。

最近飲めるようになったお酒とおつまみを手にして。



私は特にスルメイカが大好き。


「はー…酒さいっこ…」




早く彼氏ほしいな、なんて思ってしまう。

だって彼氏いない歴＝年齢だもの。







「まあ、そんな相手いないけど。
　…誰か私のこと、拐ってよ。
　…ふふ、なーんてね。」





あぁ、バカだなぁ…
私は思わず苦笑を浮かべた。




すると突然、びゅうっと風が吹いた。
なかなか強い風だったから思わず目を瞑ってしまう。

カーテンがユラユラと静かに揺れていた。





「ッ、…！？て、あれ…？窓開けてたっけ…」




私はよいしょ、と掛け声と共に立ち上がって窓を締めた。
床に真っ赤な物が落ちていて、私はそれを拾い上げる。


…ん？薔薇…？





「なんだこれ…っ、いて！」





その薔薇はトゲがあって、それが刺さってしまった。

血は薔薇と同じ色をしていた。
薔薇に血が染み込んでいるのは確かだが、そんなのは見えやしない。






「あぁ、お嬢様、…大丈夫ですか？美しいあなた様の手が傷付いてしまった…」


「！？な、何で怪盗、キッド…が…？」







ユラユラと風に靡く真っ白なマントにシルクハット。
よく見ると幼げな顔をしていて、子供らしい印象が残る。

…そう、神出鬼没な怪盗キッドが私の部屋に現れた。





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