000 ページ8
.
「…ゆず、ちょっとお手洗いに行ってくるね。」
柚那「どうした?大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
彼から目をそらして、立ち上がる。
みんな盛り上がっていて全く気づいていない様子だったけど、片寄くんは優しく微笑んでくれた。
「……ふぅ、」
お手洗いの鏡の前。
そこには少し頬が赤くなったわたしが映る。
とりあえず手を洗って、ハンカチで手を拭いて、冷たくなった両手で頬を包み込んだ。
「つめたい……、」
最初はどうなることだろうと思っていたのに、なんだかんだで楽しいと思っているわたしがいる。
部署が違っていたり、同じ部署でも話したことがないような人とも話すことができたり、この会社の人はとても温かい人たちばかりで
ああ、どうして今まで避けてきたんだろう…って。
ずっと柚那と敬浩さんが居てくれればそれでいい、なんて言って強がっていた。
わたし、ほんとうに馬鹿だったなぁ……。
軽くリップクリームを塗ってみんながいる所へと戻ろうと歩く、その廊下の途中、
壁にもたれながら携帯を弄る人の姿が見えて。
「……………」
声、…かけた方がいいのかな?とかそんな事を考えながらも、無言で通り過ぎようとするわたし。
そんなわたしに気がついたのか
「ねえ、」
と、控えめに引き止められた。
足を止めて振り返ればその手には携帯は握られていなくて、ただ、じっとわたしのことを見つめる瞳に目がそらせないでいる。
亜嵐「涼太に見に行けって言われて……それで、彼女さんにも見てきてくださいって頼まれて。」
「え、」
亜嵐「…あの、玲於とかじゃなくて、ゴメンね。」
そう言いながら苦笑いを浮かべた。
全然、そんなことは思っていないのに、本当に申し訳なさそうにするからわたしまで申し訳なくなる。
白濱さんって、いつもこんな感じなのかな?
クールというか何も話さないというか、大人数でいるよりも一人でいる方が楽…みたいな、
そんなイメージだから。
だって、たった数時間の彼しか知らないんだもの。
「白濱さんって…お酒は強い方ですか?」
知らないことが多いなら今から知っていけばいいんだよ、っていつか柚那に言われた気がする。
きっと、もっと彼には魅力があるのに知らないなんて勿体無いし、だったら知ればいいんだと思った。
.
137人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピノ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mim05
作成日時:2018年3月20日 4時