ひとりぼっち ページ16
*
「うっわ、最悪。こっち雨降ってんじゃん」
あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。鏡の近くで未だにしゃがみ込んだままの私は、頭上から降ってきた不機嫌そうな様子の男の子の声で顔を上げた。
男の子の言葉に空を見ると、そこは一面灰色に覆われていて、雨粒をたくさん落としていた。
視線を前に戻すと、名前も知らないその男の子が地面を強く蹴って走り出す。
そして、私という存在に気づかないまま私の身体を踏んづけて、そのまま建物に向かって走り去って行った。
「痛い…」
雨はいつから降っていたんだろう。そういえば、エース君達の姿も見当たらない。俯いて泣きじゃくっていた私はあれから一度も顔を上げていなかったから、エース君達が居なくなっていた事にも気がつかなかった。
もう、私の事は諦めて寮へ帰っちゃったのかな…。
漸く止まってくれていた涙が再び込み上げて来る。見捨てられたらどうしよう。このまま、私はここで本当の【ひとりぼっち】になってしまうのかな…。
もしかしたらあの鏡をもう一度潜れば、みんなにまた私を見てもらえるのかもしれない。私の声が届くのかもしれない。
…だけど、情けない事に今の私にそんな勇気はない。それを試すことを諦めたくはないけれど、怖くて鏡の前に立つことすら出来ない。
そうやって、涙でぼやけた視界のまま鏡を見つめて考え込んでいると、鏡に波紋が広がった。また、誰かが寮へ戻ってきたようだ。
だけど、出てきたのは思い浮かべていた彼らじゃなくて、知らない男の子。彼もまた、私をすり抜けて建物中へと消えて行く。
「痛い…」
踏みつけられて、すり抜けられて、心が痛い。雨までもがやはり私の存在を無視してくる。
誰かに認識してもらえない事がこんなにも苦しいものだとは思わなかった。気付いてもらえない事への不安と恐怖で胸がいっぱいになってきて、痛くて、なんだかくらくらする。
もうこれ以上その現実を突き付けられたくなくて、私はふらりと立ち上がり、のろのろと鏡の前から移動した。
俯く私の視界には濡れた石畳と透けている私の足が映る。だけどその足がいつもとは違って見えて、それを認めた瞬間、のどを締めつけるような恐怖が襲ってきた。
「──っ!う、うそ!なんで!?」
いつもは、ほんの少しだけ透けているというのに、今の私の足は半透明。咄嗟に、腕や胴体にも目をやってみたけど、どこも足と同じくらいに透けていて。
その恐怖に自分の体を抱き締めた。
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塩(プロフ) - コメント失礼致します。ゴーストちゃんと生徒たちの関係性がとても可愛くて続きが気になります!ゴーストちゃんにはいろんな愛を感じて幸せになってほしい……!お身体に気をつけて、無理せず更新頑張ってください!応援しています! (2020年7月18日 15時) (レス) id: 791ebcf5a9 (このIDを非表示/違反報告)
ラム - 話し続きが気になる (2020年6月28日 15時) (レス) id: 9e05ed3410 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくる | 作成日時:2020年6月26日 18時