077.まさかの尋ね人 ページ30
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インターホンが鳴り、玄関の鍵を開けると何故かそこにはAちゃんだけでなく懐かしい顔が立っていた。
「……近くでばったり会って、その……」
「一緒に来ちゃったあ」
「……」
そこにいたのは、確かニコニコ時代に何度かイベントで会ったことのある「あやちゃん」だと思われる。俺がイベントにめっきり顔を出さなくなったから、久しぶりだし、何よりイベントで会ってた時だって、苦手なタイプだと直感的に認識していたから言うほど話した記憶もない。しっかり壁システムが導入されていたわけだ。
そんなあやちゃんの横で、Aちゃんは申し訳なさそうに縮こまっていた。でも、すっかり人見知りしている俺を見て吹き出しそうになっているから、横目で睨む。
「私も一緒にいい?」
「……Aちゃんがいいなら俺は別にいいけど……」
「いい?」
「……ハイ」
渋々と言った感じで頷いたAちゃんを見て、この子も特に仲がいいわけではないのだろうと思う。確か昔キヨくん関連であやちゃんとひと悶着あったような気がするし。じゃあなんで連れてきたのかという感じだけれど、様子を見るに、あやちゃんのこの押しの強さに負けてしまったんだろう。
俺は2人をリビングに通すと、水を入れて出してやる。
「レトさんいい家住んでるね〜」
「いやまあ、どうも」
「何、相変わらず人見知りしてる?」
「……おい、笑ってんじゃねえぞお前」
「……ゴメンナサイ」
隣に座るAちゃんを睨みながら軽く小突くと、楽しそうに笑う。その様子を見てあやちゃんは「仲良いねえ相変わらず」とくすくす笑う。
Aちゃんは「あ、家で作ってきた。相変わらず出前生活だと思って」と紙袋からタッパーをいくつか取り出した。俺の好きなものだらけの品ぞろえに、心臓の奥が擽られる。
「お前、俺の母さんなの?」
「……いらないなら持って帰る」
「もったいないから貰うけど」
「……そんなありがたみの欠けらも」
「貰います貰いますありがとう」
「どういたしまして」
いつものように軽口を叩き合う俺たちを、あやちゃんは頬杖をつきながら見つめていたかと思えば、持ってきていたビニール袋を「あ、私も手土産!」と掲げた。
「お酒買ってきた!飲もーヨ」
「わ!いいんですか!」
「おい」
「……ケチ」
相変わらずの酒ヤクザに、軽く牽制すると口をとがらせた。あやちゃんは「まあまあ。たまにはさ」とAちゃんの前に缶のお酒をいくつか積み上げた。
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parumu(プロフ) - なみのさん» こちらにもありがとうございます!読みやすさとそれっぽさ(?)を意識しているので嬉しいです!笑 これからもよろしくお願いします! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - 夜さん» 長い文章を読んでいただき本当にありがとうございます、、、!頑張ります! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
なみの - さいっっっこうじゃないですか!文章も分かりやすくて最高です!!(二回目) (12月19日 21時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 最初から読んでいます。本当に最高です。文才もあり羨ましいです!応援しています! (12月9日 11時) (レス) id: b9a823def9 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - りんごさん» 読んで頂きありがとうございます💕!🦀さんの声を脳内再生しながら、🦀さんならどうするかなと想像しながらリアルを追求して書いてるので嬉しいです🥲! (12月2日 3時) (レス) @page49 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時:2022年6月23日 22時