065.俺のひとり相撲 ページ18
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「ありがとうございます」
視聴者さんだったようで、慌てて笑顔を作って返すと、凄く嬉しそうに笑ってくれる。「あの、握手して貰ってもいいですか」感染症の影響でなかなか視聴者の方と会う機会が無いから、私も嬉しくなって「勿論」と返す。
「これからも頑張ってください、動画楽しみにしてます」
「ありがとう!」
「あの」
私と視聴者さんが話していると、後ろから両手に食べ物を持ったキヨくんが怪訝そうな顔でこちらを見ていた。視聴者さんは「えっ!?」と驚くと私とキヨくんを交互に見比べる。
「何か用ですか」
「あ、いや……」
キヨくんは淡々とした口調で彼に話しかける。視聴者の男の子は「キヨさん、いつも見てます!あの、Aちゃんのことをよろしくお願いします!」と急に頭を下げて「邪魔してすみませんでした!」と足早に去っていった。
残された私とキヨくんは去っていく彼の背中をぼんやり見つめ、数秒後お互いに目を合わせて吹き出した。
「待って、また変な男に絡まれてんのかと思って俺……」
「視聴者の方だって」
「まじかぁ……俺のひとり相撲じゃん恥ずかし……」
「逆に応援されちゃったね」
「……Aちゃんをよろしくお願いしますされたんだけど」
むず痒そうな顔をしているキヨくんに、私も照れくさくて笑って誤魔化す。
ストーカーのことがあった後だったから、いつもより数段敏感になって、私のことを心配してくれていたんだろう。今回がキヨくんの勘違いだったとしても、キヨくんが私のことを守ろうと動いてくれたことが嬉しくて、不謹慎だけどにやけてしまう。
「何にやけてんの」
「……え」
バレてる。
「バレバレよ」
「……心読んでこないでよ……」
「Aちゃん考えてることわかりやすいからなぁ」
「キヨくんだって分かりやすいよ」
「俺はポーカーフェイスで売ってんのよ」
「……」
「ねえ無言はやめて」
キヨくんはけたけた笑うと、「ん」と手に持っていたぜんざいを私にくれた。
2人で並んでそれを口に運ぶと、じんわり体に広がるあたたかさにふぅと息をついた。
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parumu(プロフ) - なみのさん» こちらにもありがとうございます!読みやすさとそれっぽさ(?)を意識しているので嬉しいです!笑 これからもよろしくお願いします! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - 夜さん» 長い文章を読んでいただき本当にありがとうございます、、、!頑張ります! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
なみの - さいっっっこうじゃないですか!文章も分かりやすくて最高です!!(二回目) (12月19日 21時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 最初から読んでいます。本当に最高です。文才もあり羨ましいです!応援しています! (12月9日 11時) (レス) id: b9a823def9 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - りんごさん» 読んで頂きありがとうございます💕!🦀さんの声を脳内再生しながら、🦀さんならどうするかなと想像しながらリアルを追求して書いてるので嬉しいです🥲! (12月2日 3時) (レス) @page49 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時:2022年6月23日 22時