063.君の優しい時間 ページ16
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しりとりをしながら向かった鳥羽水族館。Aちゃんは水族館が結構好きなようで、着いた瞬間から見るもの見るものに「わぁ」といちいち歓声を上げている。
「キヨくん」
「ん?」
間抜けな顔をしたマンボウと見つめあっていると、Aちゃんが「来て来て」と楽しそうに俺を手招きしている。そちらへ行ってみると、カワウソがAちゃんの方を見上げていて、彼女はうっとりした顔で「かわいすぎる〜」ときゃっきゃしていた。
「すげぇ見てんじゃんコイツ、Aちゃんのこと」
「美人は動物に好かれるんだなぁ」
「そーね」
「そーねって」
「美人なのはホントだもんなぁ」
「……」
行きの車のお返しだ。「ほんと可愛いよなぁ」と言ってのけると、Aちゃんは俺を無視してカワウソと目線を合わせてしゃがみこんだ。
ちらりと髪の間から覗く耳が赤い。
「聞こえてないならもう1回言おうか?」
「聞こえてるからもういいです……」
「んふふ」
ぼそぼそ言い返す彼女に笑いをかみ殺した。ほんと、可愛い。
カワウソコーナーを抜けて大きな水槽を二人並んで見上げる。水族館がカップルのデートの定番コースだとされる理由がよくわかる気がする。ほのかに薄暗くて、静かだからお互い小さな声で話して自然と距離も近くなる。なにより、水族館のライトでAちゃんの目がきらきら光ってすげえ可愛いのだ。
「……」
水槽を見上げるAちゃんを横目で盗み見ながら、目に焼きつける。
目をきらきらさせながら、Aちゃんが「……アジ美味しそー」とか言うものだから、思わず吹き出しそうになった。
「Aちゃんって、ちょっと変だよね」
「えっ」
「美味そうではないしょ、あれ」
「……美味そうだよ、だってあれを捌いてお刺身にするんだからさ」
「捌くこと考えんなよ」
俺がけらけら笑うから嬉しくなったのか、Aちゃんはふふと笑う。
もう、何年も好きでいるから、今更彼女のどんなところが好きとかよく分からないけれど、一緒にいて優しい時間が流れるところが何より好きだと思う。実況やると伝えた初めての相手がこーすけの妹のAちゃんだったのも、彼女の雰囲気がそうさせたのだろうと、今になってみれば簡単にわかるくらい。
「キヨくん、次イルカ行こ!」
「イルカはいるかーっつって」
「……」
「無視!」
くすくす笑うAちゃんの後ろを、俺も笑いながら歩いた。
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parumu(プロフ) - なみのさん» こちらにもありがとうございます!読みやすさとそれっぽさ(?)を意識しているので嬉しいです!笑 これからもよろしくお願いします! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - 夜さん» 長い文章を読んでいただき本当にありがとうございます、、、!頑張ります! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
なみの - さいっっっこうじゃないですか!文章も分かりやすくて最高です!!(二回目) (12月19日 21時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 最初から読んでいます。本当に最高です。文才もあり羨ましいです!応援しています! (12月9日 11時) (レス) id: b9a823def9 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - りんごさん» 読んで頂きありがとうございます💕!🦀さんの声を脳内再生しながら、🦀さんならどうするかなと想像しながらリアルを追求して書いてるので嬉しいです🥲! (12月2日 3時) (レス) @page49 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時:2022年6月23日 22時