062.お近付きの作戦 ページ15
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――絶対絶対キヨくんとこの旅行中にお近付きになる
その宣言通り、動画の撮影と編集以外の時間を充てて考えた旅行プラン。楽しい時間になるといいな。
「おねーさん一緒に赤福食いに行きませんー?」
「……」
伊勢に着いて、キヨくんがレンタカーを借りに行ってくれているのを待っていると、後ろから声をかけられる。せっかくキヨくんとの旅行の心構えを改めてしていたのに、腰をおられた上に変なナンパ。私はげんなりしながらそちらを振り返ると、車のキーをくるくる手元で弄びながらキヨくんが立っていた。
「待って、そんな嫌だった?」
ナンパの言葉はキヨくんのおふざけだったらしい。私が心底嫌そうに振り返ったものだから、キヨくんは手を叩いて爆笑している。「そんな嫌そうにしなくても!」と笑っているキヨくんに、私は「変な人に絡まれたと思ったんだもん……」と口をとがらせて言い返した。
「普段のAちゃんなら、愛想笑いで対応すんじゃん」
「変な人に好かれたりストーカーされたり、もうさすがに懲りてきたよ……」
キヨくんは何がそんなに面白いのか、ゲラゲラ笑ったあと、「よし、行こう」と車に向かって歩き始めた。私もあとに続いて助手席に乗り込んだ。
「まずはどこに行けばいいんですかね」
「鳥羽水族館!」
「オッケー」
長い指でナビをいじって目的地を登録すると、キヨくんは慣れた手つきで運転を始めた。何度かキヨくんの運転する車に乗せてもらったことはあるけれど、今日は2人きりの旅行。
(かっこいい)
運転してるってだけで何でこんなにかっこよく見えるのか。私は運転するキヨくんの横顔をじーっと見つめる。
「……Aちゃん、見すぎ」
「へ?」
「運転してる俺がかっこいいのは分かるけど、そんな見られると事故りそうなんだけど」
「……」
図星をつかれた私は、思わず黙り込んで、いそいそと前を向く。キヨくんは、「いや!今のは自分で言うなってつっこむとこだから」と楽しそうに笑っている。
私はスカートをきゅっと握りながら「かっこいいのはホントだから……」と蚊の鳴くような声で言った。
「……」
「……」
沈黙。顔が徐々に熱くなるのを感じつつ、何も言えずにいると、キヨくんは「……ちょっと、それは」としどろもどろ顎を触りつつくちもとをもにょもにょとさせている。
「なんも言えなくなっちゃったわ」
珍しく照れるキヨくんにこっちまでますます照れてしまった。
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parumu(プロフ) - なみのさん» こちらにもありがとうございます!読みやすさとそれっぽさ(?)を意識しているので嬉しいです!笑 これからもよろしくお願いします! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - 夜さん» 長い文章を読んでいただき本当にありがとうございます、、、!頑張ります! (12月24日 8時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
なみの - さいっっっこうじゃないですか!文章も分かりやすくて最高です!!(二回目) (12月19日 21時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 最初から読んでいます。本当に最高です。文才もあり羨ましいです!応援しています! (12月9日 11時) (レス) id: b9a823def9 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - りんごさん» 読んで頂きありがとうございます💕!🦀さんの声を脳内再生しながら、🦀さんならどうするかなと想像しながらリアルを追求して書いてるので嬉しいです🥲! (12月2日 3時) (レス) @page49 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時:2022年6月23日 22時