【ky】最終兵器妹2 (ページ47)

今日:19 hit、昨日:8 hit、合計:80,669 hit

096.死にそうな顔でページ47

.

　年始の動画で初めて最俺の実写動画に出演したあと、わたしのチャンネルでもなにか上げられないかなーと考える。とはいえ、当方大学生なので、あまり凝ったことは出来ない。

　そこで思いついたのが、「不味いチョコレートあげてみた」という所謂ドッキリ企画。なのだけど、バレンタイン前日に身内にアポイントを撮りまくったところ、みんなが「時間空いてるよ〜」と言う中、レトさんだけ「無理」との返信が来た。

「……珍しい」

　大学の学食でぼっち飯をしながら呟く。
　何かあるのかなとレトさんに電話をかけてみると、ツーコールで出て「……はい」といつもよりさらに低い声で返事をされた。

「……どこか別の日でもいいんだけどさ、会って実写撮れない？」

『……暫く無理』

「どうしたの？」

　レトさんがわたしと動画を撮ることを渋ることなんてこれまでなかったくらい、すごく協力的だったから、眉をひそめながら尋ねる。レトさんはわたしの言葉に観念したように「……風邪ひいた」と一言。

「え、大丈夫？」

『なんか昨日から喉やられてずーっと続いてんの……』

　確かに、言われてみれば声がかすれていて、言葉もいつもよりゆっくりとしている。抑揚がない感じだ。
　体調を滅多に崩さないで有名なレトさんなのに、珍しい。

「ご飯食べれてる？」

『……カップ麺は食った』

「そんなんじゃよくなるものもよくならないよ」

『大丈夫だよ大袈裟だな』

　わたしは、急いでおぼんを学食の配膳台に返すと、「食欲は？ある？」と聞く。喋るのもしんどそうなので、出来るだけ早く切りたい。「……まあ」というレトさんの返事に、わたしは「わかった」と頷いた。

　レトさんは何か勘づいたのか、「……来んなよ、うつしたくないから」と言葉を続ける。

「食べ物届けるだけだから。待ってて」

『いーってば……』

「私の自己満足だから！寝てていいから！じゃあね！」

　だって。1人で風邪をひいて苦しむってどんなに心細いだろう。わたしより年上とはいえそれは変わらないと思う。

　わたしは大学からスーパーへ行き、喉が痛くても食べられそうな栄養のある食べ物を買い込んで、レトさんちに向かった。

「……いいって言ってんのに」

「死にそうな顔してよく言うよ〜」

　玄関の鍵を開けたレトさんは本当に文字通り死にそうな顔をしていて、わたしはとりあえずビニール袋からポカリをわたして家の中へお邪魔した。

.