【ky】最終兵器妹2 (ページ37)

今日:20 hit、昨日:8 hit、合計:80,670 hit

086.全部見せようかページ37

.

　レトさんに「Aちゃんの誕生日に3人で飯食いに行こう」と誘われて、何も用意しないのはどうなのかと思って色々考えた。

　付き合っていない女の子に贈るプレゼントとして、重くなくて、かと言って適当でもない、丁度いいラインはなんだろうと思いながらデパートを彷徨い歩いていた。

　結果、重たいだろと思いながらも覗いたアクセサリー屋さんで見つけたピアスが可愛くて、あとは、

――別に引きずってるわけじゃないよ。忘れないようにつけてるの

　単に、独占欲だ。

　Aちゃんはしばらくピアスと見つめ合うと、紅潮した顔で俺の方を見た。
　重かっただろうか、というか、元彼との思い出に踏み込むとか無神経だっただろうか。今更不安になる俺に、Aちゃんは「ありがとう」と言った。

「ファーストピアスそろそろ取りたいなって思ってたから」

「そう、なんだ」

「……あの、さ」

　Aちゃんはぎゅっと箱を握りながら、俺を見る。

「キヨくんは、私のことどう思ってるの？」

「……」

　痛いところをずばりつかれた。
　「どうって……」と情けない声を漏らす俺に、Aちゃんは「わたし、子どもだから」と拙く言葉を続ける。

「前の飲み会の後のこととか」

「……うん」

「こうして、ピアスをくれるのとか」

「……うん」

「……全部、どういう意味かなって考えちゃう」

　Aちゃんの言葉に押し黙る俺。

　Aちゃんにピアスをあげるのは、ただのアクセサリーのプレゼントとは意味が違うとわかっていた。引きずっている訳では無いと言っていたけれど、元彼とAちゃんとを今も繋いでいる印がその穴だ。それを塞ぐ新しいピアスをあげるのは、それなりに意味を持つと、彼女も当たり前に気づいたようだった。

「……好きだよ」

「…………」

　俺の言葉に、Aちゃんは小さく瞳を揺らした。

　Aちゃんの表情から、「わたしのことどう思う？」と尋ねたのは、生半可な気持ちじゃないと充分わかった。レトさんがこうして、2人きりの時間を誕生日という特別な日に用意したのも、「いつまでも逃げるな」と背中を押してるんだとわかっていた。

　変に意地をはるのをやめよう。大人ぶるのをやめよう。怖がりな俺まで全部Aちゃんに見せてしまおう。そう思うと口からするりと言葉が出た。

　俺は大きく息を吐く。息が熱い。「……好きだよ」ともう一度言いながら、ケーキの上のいちごくらい赤くなるAちゃんの顔をじっとみた。

.