083.可愛いに押され ページ34
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我ながら勇気を出したと思う。
あやさんと付き合ってるのかと尋ねたことも、キヨくんと2人で邪魔の入らない場所で過ごしたいと提案したことも。
それもこれも、レトさんの「安心して、お前は可愛いよ」と言う言葉かなり背中を押してくれていた。あれだけ嫌だった「可愛い」という言葉に、背中を押されることもあるんだなと不思議な気持ちになった。
(ありがとうレトさん)
「……あんま綺麗じゃないよ？」
「いいよ、いきなり来たんだもん」
せっかく中目黒まで出たのに、見慣れた場所に戻ってきたことに、なんだか可笑しくて2人で顔を見合わせて笑った。
キヨくんは置きっぱなしにしていた空のペットボトルを集めると、「どうぞどうぞ。主役ですから」と座布団を敷いて座らせてくれた。
「ケーキ冷蔵庫に入れて、……あ、寿司の注文……」
ブツブツ呟きながら準備を進めてくれるキヨくんを見ながら、わたしは思わずにやける頬を押さえる。大好きな人と2人きりで過ごす初めての誕生日。
(ありがとう……レトさん……)
何度目かと言うほどの感謝を心の中で述べていると、キヨくんが出前の注文を終えたのか戻ってきた。私の隣にストンと座ると、気まずそうにお茶を1口。
「……あやちゃんとはなんもないよ、ホントに」
「……」
「あの夜も、まあ一緒にはいたけど、何にも起きてないし」
「……そっか」
レトさん、セ フレじゃなかったよ。わたしは心の中で報告する。心の中でピンと張っていた糸が緩んだ。
「セ フレかと思った……」
「ごほっ」
わたしの言葉にむせるキヨくん。「フジにも似たようなこと言われたわ」と嫌そうな顔をする。
「……好きな子以外としないよ」
「……」
「意外とそういうとこ潔癖だよ、俺」
「……ふうん」
ふうんってなんだよとキヨくんが笑う。
わたしはいつも、キヨくんがわたしを置いて大人の世界に行っちゃうんじゃないかって心配する。大学生になった時も、社会人になる時も、こうして彼女が出来たかもって思った時も。
でも、その心配はいつも見当違いで、キヨくんは全然わたしを置いていってなんて居ないのだ。
「……」
「……」
「テレビつけていい？」
沈黙に耐えかねたのか、キヨくんはわたしに断りを入れてからテレビのリモコンを操作した。
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作者名：parumu | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時：2022年4月10日 12時
