ただ一人を慕う愛され少女【H×H】

月と好き ページ23

部屋へ戻るとハンゾーさんはいなくなっており、ポックルはすやすやと寝息をたてて眠っていた。

時計を見るとそこまで遅い時間ではないものの、明日に備えて早くに寝たのだろう。

お風呂は済ませたので私ももう寝ることにした。

隣のベッドにそっと横になり、なんとなく携帯電話を開いてみると、メッセージが一件届いていた。

＜ウイングさん＞

そう表示されているのを見て心臓が跳ねる。

好きな人からの連絡はこうも心が弾むものなのだなとうるさい胸を押さえつつ、一人で納得する。

画面の光が漏れないように体を丸めながら文字を読み進める。

【A、今日もお疲れ様です。恐らく数日間に渡っての試験になると思いますので返信はいつでも結構ですが、心配なのでなるべくお願いします。Aなら問題ないと思いますが。では、連絡待ってます。】


ぎゅっと胸の前で携帯電話を抱きしめた。

心配してくれているんだなと思い、心が温かくなる。

それは師範として弟子に向ける想いなのだということは理解しているが、嬉しいものは嬉しい。

返信はいつでもいいといっているのに最後に待っていると書くところもかわいらしいし、わかりやすい人だなと笑みがこぼれる。

すぐにはっと我に返り、文字を打っていく。

心配しないでください、大丈夫ですよ、ありがとうございますというような内容の文章で最後に部屋から見える月の写真を添付し、送信した。

『月がきれいですね』とでも書き添えたかったが、好意の押し売りはかえって距離を離してしまうものだし、迷惑になると申し訳ないし、第一そんな勇気は持ち合わせていない。

そんなに疲れは感じないが、寝ないと体調を崩してしまうかもしれないので目を閉じる。

ウイングさんはもう寝たかな、ズシはどんな修行をしたのだろうなどと考えることは色々あるが、脳内を巡らせるうちに意識を手放していった。

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