夢のような話し ページ34
ニコニコと笑うフロイドの気を教壇に向かせる為、再び鞭を唸らせると漸く視線がこちらに向く。
「じゃあ、リーチ弟。この2つの素材と別の素材を加えると水に浮く薬が作れるが、その素材名を答えろ。」
「えー?それ今までやったー?」
「応用だ。さっきの問題が分かるならこれも自ずと分かるはずだが?」
暫く思案するフロイドだったが、Aの為だと自身に言い聞かせているのかその表情はとても真剣だ。必死に脳内を検索している様子のフロイドにAも答えを導こうと物思いに耽ようとしたがその前にフロイドの方が先に答えを導き出せたようだ。
「あー！分かった〜。浮き雲じゃね〜?」
「正解だ。浮き雲の性質上水に浮かぶように薬を作れるが、ここからが本題だ。浮き雲の反対の性質を持ち合わせる素材を…リーチ弟、答えてみろ。」
「うーん…、でもそれって〜、石とかじゃないよね〜?」
「惜しいが今回は鉱石は使わずにやる。鉱石は高価だが、それとは別の代替品で補えるからな。安価で出来るならそれに越したことはないだろう。」
妙に説得力のある先生の話に金欠なのだろうか、と脳内の片隅をチラつかせる。
「じゃあ、あれじゃね?陸の動物の足〜」
「名前を言え、名前を。」
「それ以上は分かんね〜！」
「はぁ…。ここまでは良かったからまぁ…良しとするか…。因みにAは分かったか?」
「反対の性質……、動物の足……。陸蜥蜴の脚ですか?」
「Goodboy!正解だ。後はお前らでも出来るだろう?俺が監督してやるからさっさと作るぞ。」
「よーし！やる気出てきた〜!!」
Aを持ち上げたまま、錬金釜へと向かうフロイド。そのまま2人1組で錬金を行う事に。
「集中が肝心だからな。」
「分かってるってー」
「それが心配なんだがな……」
眉間に皺を寄せる先生を横目にAは僅かに緊張していた。この薬があれば水の中に沈む事が出来る。それはAにとって夢のような話だったからだ。まさか錬金術で作れるなど思いもしなかったが故にこの作業はAにとって、とても緊張を伴うものだった。それがフロイドや先生に伝わってきたのか、2人の視線が自然と交差する。錬金釜の前で杓を強く握るAに2人が柔らかく声を掛ける。
「ルリハタちゃん、緊張しちゃってるの?かっわいい〜」
「お前が緊張すれば相手であるリーチ弟にまでそれが伝わる。確かに失敗は許し難いがそれではお互いに良い錬金術にはならん。良い物を創り出すならまずは己の精神と向き合え。いいな？」
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作者名：モネ | 作成日時：2021年10月5日 13時
