相談するなら頼れるあの人 ページ32
水の中に入っては浮かびを繰り返していると遂に日が沈んでしまう。それだけで今日の練習が終わってしまったと思うとやるせない。
まるで蓮の葉の様に浮かんできてしまい、中々沈む事が出来ない。
「うぅ…」
「あはっ、ルリハタちゃんすっごい悔しそー。」
私を抱き上げて部屋に戻るフロイドさん。最近抱き上げられる事が多くなった気がするのは気のせいじゃないだろう。
「だって、沈めないんですよ?…これじゃ…海の中なんて……」
「…うーん。」
急に悩み出す彼はもしかして一緒に沈む方法を考えてくれているのだろうか?
先程までニヤニヤと笑っていたのが嘘のように今の彼の顔つきは真剣だ。
…そういえば、誰かから聞いた事がある。
海は塩分濃度が高い分浮かびやすい、と。そう考えたら今のままではやはり沈む事は出来ないのだろう。
彼らが言っていた次の休みは明後日。明日までに沈めなければ足でまといでお留守番となるだろうと考えた所で自分の中で諦めの感情がついてきた。
「やっぱり、海は諦めます。」
「え、なんで?」
「海は沈みにくいって聞いたことありますし、それに明日までに全て上手くいくとは思えません…。皆さんに練習まで付き合ってもらって大変恐縮なのですが、今回は諦めます。将来いつかいけるようになった時にまた誘ってください。」
「ルリハタちゃん…。」
途端に悲しそうな顔になると、彼は急に方向転換して走り出したので慌てて服を掴んでしまう。
ど、どこに…?!
鏡を潜り抜け、寮の外に飛び出した彼に声を掛ける。
「ど、何処に行くんですか?!」
「イシダイせんせぇの所!先生なら何かアドバイスとかくれそ〜!」
意外にも彼は先生から助言を貰おうとしている事に驚く。そこまでして私を海に連れ出そうとしてくれる彼に胸が熱くなる。ついでに鼻もツーンと来てしまいそうで慌てて目頭を押えた。
「あ!イシダイせんせぇ〜!!」
「ん?…リーチ弟か。というより廊下を走るな。何度言わせるんだ、お前は。」
呆れた口調だが、ゆっくりこちらに振り返る先生。
息切れも程々に彼は捲し立てるように言葉を並べると先生が腕の中にいる私を見る。
「お前ら、そんな計画をしているなら先ずは俺に言え。駄犬どもめ。」
「す、すみません…」
「あはは!忘れてた〜」
「全く…。取り敢えずリーチ弟。こいつは他の奴らよりも沈みにくいのは確かだ。何か魔法薬でもなければ沈むなんて夢のまた夢だ。」
「え〜?イシダイせんせぇ、何とかしてよ〜。」
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作者名：モネ | 作成日時：2021年10月5日 13時
