沈めません!! ページ31
水上での泳ぎが出来た彼女だったが、水中では中々上手く行かなかった。
何故なら彼女は沈む事が出来なかったからだ。
それはもう、まるで浮き輪のように。
「ぷはっ」
「うーん?沈めないねぇ〜?」
「う、まさかこんな所でも弊害があるとは…」
「…寧ろ下に行こうとする推進力が足りないんじゃない?」
「推進力?」
「水中に潜る事は出来ても、そこから下に沈めないなんて思えないし〜、もしかしたら下へ行く力が弱いのかも。」
「…もう一度やります!」
バシャ、プカ〜〜
すぐに浮かんでくる彼女が少し面白くてその場で行方を見守っていたが案の定浮いてきた。しかもうつ伏せのまま浮かんでくるものだから、まるで陸の人間が死んで浮かんでいるようにも見えなく無い。
こんな所アズールたちが見たら驚くだろうな〜。
「練習は捗っていますか?」
言うが早いか本人登場だ〜。ジェイドもいる。
アズール達は俺の横にうつ伏せのまま浮かんでいる彼女を見つけると目を大きく見開き慌て出す。
「フロイド!!彼女溺れてませんか?!」
「あっはははは!!やっぱ、そういう反応するよね〜!?」
「何を悠長な!早く助けなさい!!」
ジェイドは何となく分かったのか苦笑を零す程度だったのでつまらない。
アズールが中に入ろうとした矢先彼女が頭をようやく上げる。
「沈みません!」
「あっはははは!!ルリハタちゃん、まじおもしれぇ〜!!」
「はい?何かしました?」
「無事、だったんですか…」
「フロイド。アズールは真剣に彼女を助けようとしたのですから笑うのは些かどうかと。」
そう言いつつ口元に手を当てほくそ笑む片割れに、自分もじゃん、と言っておく。
ホッとしたアズールを見て首を傾げる彼女は先程の経緯を話した。沈めない事が相当悔しかったらしく、アズールにコツを聞いていた。
「水の中に沈むコツ、ですか?…そうですね、足の使い方、だと思いますが…」
「足の使い方?」
「下へ行こうとする推進力を利用するんです。後、体はなるべく垂直に。抵抗力が無い方が下へ行きやすいですからね。」
「やっぱり、推進力…」
「だ〜から、言ったじゃん。」
アズールが俺と同じことを言っててニヤニヤ笑ってしまう。彼女がそれを見て頬を膨らませると分かっててやってしまうので自分も相当だなと思う。
アズールの指導を受け、もう一度試す彼女だったがやはり上手く行かないようで先程と同じでうつ伏せで浮かんできた。
「まさか、こんな所で躓くとは…」
これにはアズールも驚いていた
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作者名：モネ | 作成日時：2021年10月5日 13時
